【楽天】ファームで奮闘中の茂木栄五郎を直撃「今までは恵まれていたことをすごく実感します」

橋本2軍外野守備兼打撃コーチ(右)と談笑する茂木(8月9日撮影)
橋本2軍外野守備兼打撃コーチ(右)と談笑する茂木(8月9日撮影)

 今年の東北の夏は暑かった。高校球児たちのプレーも熱かった。甲子園では仙台育英(宮城)が夏連覇こそ逃したものの、立派な準優勝。八戸学院光星(青森)、花巻東(岩手)とともに史上初の東北勢3校が8強入りを果たした。みちのくの高校野球ファンも心が躍ったことだろう。

 私が担当している楽天に話を移そう。シーズン序盤はなかなか波に乗れず、長らく借金生活は続いた。オリックスが独走態勢に入り、優勝戦線からはフェードアウトした。それでもクライマックス・シリーズ(CS)の希望は消えていない。最大13あった3位ソフトバンクとの差はみるみるうちに縮まり、5日終了時点で、1・5差になった。

 この時期になると、CSに向けた戦力も固まりつつあるが、現在の1軍戦力に故障などの不測の事態が起こった場合には、ファームから上がってくる選手を調べておくことも記者の仕事の一つ。1軍戦の前に2軍施設ある泉グラウンドへと向かった。

 一人の男がずっと気になっていた。茂木栄五郎だ。今季は1軍で8試合の出場のみ。打率0割8分3厘、0本塁打、1打点で4月19日のオリックス戦(京セラD)を最後にファーム行きを命じられた。ただ、2軍の選手ではないことは誰の目に見ても明白。「体は全然問題ないです。元気にやってます!」と話すように、イースタンでは59試合で打率3割1分9厘、2本塁打、22打点をマークしている。

 練習後に現在の心境を聞こうと、直撃した。故障を除いてここまで長いファーム暮らしは「初めてですね」と汗を拭った。続けて「懐かしさというか、昔を思い出すことはありますね。1年目とか、けがをして残留している時もあったので、この時間帯はみんな遠征に行ってて、居残り練習してたなあとか、いろいろ考える時があったので、似たような感じです」とルーキーイヤーの記憶を呼び起こした。

 若手に混じって声を張り上げながら汗を流すなかで感じるものもある。1軍の舞台を夢見て努力を続ける後輩たちを見ていると“兄”のような気持ちになるのか、こう話した。

 「頑張ろうという気持ちはめちゃめちゃ生まれますね。若手も頑張ってますから。1軍に行って、なかなか試合に出られなくて、またすぐに落ちてくる人もいたじゃないですか? 2軍にいるみんながみんなチャンスをもらえる訳じゃないですけど、頑張ってほしい気持ちはある。自分ももちろん頑張らないといけないですけどね」

 プロ8年目の茂木は梨田政権1年目から重宝され、コンスタントに試合に出続けてきた。2019年にはキャリアハイとなる141試合に出場。13本塁打、55打点を稼いだが、以降は腰痛など故障に悩まされ、昨季は73試合の出場にとどまった。

 そんな茂木にとって今年は“転機”となるかもしれない。弱肉強食の世界で競争に巻き込まれることを実感したからだ。「1軍に行って活躍する自信はあるんですけど、プロの世界なんで、みんながみんな均等にチャンスをもらえるわけじゃない。今までは恵まれていたことをすごく実感します。試合に使ってもらえるような立ち位置でやらせてもらっていた。ありがたかった。ここからは自分がつかみ取らないといけないので、前向きにやっていきます。まだシーズンはあるので、いつ呼ばれてもいいように準備しておきます」。そう語る茂木の口調は熱く、目の奥はギラついていた。(東北支局・長井 毅)

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