【報知映画賞】寺島しのぶが助演女優賞「演じ方も無限にある」

スポーツ報知
贈られた赤いバラを抱え、喜びをかみしめる寺島しのぶ(カメラ・矢口 亨)

 今年の映画賞レースの幕開けを飾る「第46回報知映画賞」の各賞が30日、発表された。助演女優賞は「ヤクザと家族 The Family」(藤井道人監督)、「キネマの神様」(山田洋次監督)、「空白」(吉田恵輔監督)の3作での演技が評価された寺島しのぶ(48)が獲得した。表彰式は今月中旬に都内で行われる。

 寺島は「言葉で伝えきれないほどうれしい。私にとって報知(映画賞)は特別な賞だから。また選んでいただけるなんて。今年は初めての監督、共演者が多く、それだけで十分幸せだったので」と喜びをかみしめる。報知映画賞は、第28回(2003年)に「赤目四十八瀧心中未遂」(荒戸源次郎監督)で主演女優賞を受賞して以来18年ぶり。この時は報知から各映画賞を総なめにした。称賛を演じる活力に変えてこの18年間、数々の役に魂を吹き込んできた。

 受賞作で演じたのは焼き肉店を営む女性(「ヤクザと家族 The Family」)、ダメ親父に振り回され苦労する娘(「キネマの神様」)、スーパーのパート店員(「空白」)。いずれも市井の人だ。「もともと人間観察が好き。特におばちゃんの言動。時々、世の中はおばちゃんが支えてるんじゃないかって思う」。演者が違えば平板な人物像になっていたかもしれない。寺島は「懸命に生きようとみんな、いろんな人間模様を抱えている。演じ方も無限にある」という考えだ。

 特に評価が高かったのは、「空白」でのテンションの高い、おせっかいなスーパーの店員。終盤、それまで内包していた感情があふれ出すシーンが象徴的だ。「主演でなく脇の時は脇としての役割がある。自分の役をあらかじめ固めるのでなく撮影現場に入ってからが勝負。今そこがどんな空気か。それを感じ取ることで初めて役が生まれるというか」

 10年には映画「キャタピラー」(若松孝二監督)で田中絹代さん以来となるベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀女優賞)にも輝いた。プライベートでは07年に結婚し、12年には長男を出産。これらの変化も演技に生きている。「もちろん家でストレスがたまることも。でも撮影に入る時、これらの感情を変に封じこめることはしません」。まず素の自分と冷静に対じすることから始まる。

 主演と助演を両方受賞しているのは過去に大竹しのぶ、倍賞美津子、田中裕子、原田美枝子ら。まぎれもなく演技派ばかり。母の富司純子は第24回(99年)で助演女優賞を獲得している。両親への受賞報告を聞くと「実はまだ。この新聞を読んでるので記事で驚かせようと思って」。(内野 小百美)

 ▼助演女優賞 清原果耶、草笛光子、奈緒、中村アン、倍賞美津子の名前が挙がるも、寺島しのぶが過半数を獲得。「頭一つ抜けていた。助演女優賞にふさわしい人」(藤田)、「寺島さんが助演としていることは、日本の映画界の宝だと思う」(松本)

 ◆ヤクザと家族 The Family 投げやりに生きていた青年(綾野剛)は、ある暴力団組長(舘ひろし)を助けたことからヤクザの道へ。しかし99、05、19年と時を経る間、暴対法により組員だけでなくその家族も巻き込み、生き残れない社会になっていた。

 ◆空白 スーパーの店長(松坂桃李)に万引きをとがめられた女子中学生は逃げる間に事故に巻き込まれ命を落とす。その父親(古田新太)は店長が娘を死に追い込んだと思い込み、憎悪をむき出しにする。被害者と加害者の感情は激しく交錯する。

 ◆キネマの神様 ダメ親父のゴウ(沢田研二)はギャンブル、酒が原因で借金をつくり、妻(宮本信子)、娘(寺島)にも見放されている。しかし若い時のゴウ(菅田将暉)は愛する映画の世界に身を置き、無限の夢を描いていた。

 ◆寺島 しのぶ(てらじま・しのぶ)1972年12月28日、京都市生まれ。48歳。父は尾上菊五郎、母は富司純子、弟は尾上菊之助。文学座で女優活動を開始。03年「赤目四十八瀧心中未遂」で報知映画賞主演女優賞。10年「キャタピラー」でベルリン国際映画祭の銀熊賞(女優賞)。

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