【ヤクルト】守護神・マクガフが東京五輪で抱いた日本球界への尊敬と誇り

スポーツ報知
東京五輪の米国代表だったヤクルト・マクガフ(ロイター)

 3位からの逆転Vを目指すヤクルトが、後半戦再開後4勝2敗1分けと好調を維持している。チームを支えるのは山田哲人内野手、村上宗隆内野手らを擁する打線はもちろんのこと、26日時点でセ・リーグ2位の救援防御率3・21を誇る中継ぎ陣の働きも大きい。

 その中でも現在、守護神を務めるスコット・マクガフ投手は、開幕時は8回を任されていたが、チーム事情もあって5月下旬から抑えに配置転換。ここまで42試合に登板して2勝1敗、14ホールド、18セーブ、防御率2・43をマークしている。25日の中日戦(静岡)では1点リードの9回に自身の暴投により失点。セーブに失敗となったがチームへの貢献度は大きく、高津監督からの信頼も絶大だ。

 右腕にとって今季は特別なシーズンとなった。東京五輪の米国代表に選出され、決勝戦では日本代表・侍ジャパンに敗れたものの、銀メダル獲得に貢献した。決勝戦では山田との直接対決もあり、右前安打を許したが「自分もいい球を投げたと思うが、山田選手がそれを上回るようないい打撃をした。いい経験ができたと思う」と充実した表情で振り返った。

 今季で来日3年目。「野球人生では一番の経験」と振り返った東京五輪。右腕の胸に残ったのは、日本野球界への思いだった。

 「一番印象に残っているのは、アメリカのチームメートが日本の打者のレベルにすごく驚きを見せていて感激した。この経験はどの経験にも代えがたいし、すごく価値がある。日本に来て(ヤクルトで)プレーすることも大きな経験ではあったが、その日本で戦って、日本を相手にして、世界に日本のレベルの高さを見せられた。そういうのも自分にとっては大きなことだったと思う」

 侍ジャパンとは、準々決勝と決勝の2度対戦。米国代表のメンバーが驚きを見せていたのは、投打におけるレベルの高さと隙のなさだったという。

 「日本のレベルの高さというのはもちろん、1番打者から9番打者までとにかく穴がない。投手に関しては田中(将大=楽天)はみんな知っているが、森下(広島)が出てきても素晴らしい球を投げている。近藤(日本ハム)のボールに当てる技術にもすごく驚いていた」

 日本球界に対する“尊敬”。そして自身がその中で日々しのぎを削っているという“誇り”が、言葉の端々に詰まっているように感じられた。

 五輪での激闘を終えて、次なる目標はヤクルトでのリーグVだ。高津監督は後半戦再開前、五輪でも登板を重ねた右腕の疲労を考慮して、再開時からのベンチ入りを見送る考えも持っていた。しかしマクガフから「ぜひ後半の開幕からやりたい」と力強い返答があり、後半戦初戦からのベンチ入りが決まった。

 1点が勝敗を分ける場面での登板が積み重なれば、救援失敗することもある。その度に、心を切り替え、勝利の重圧と真正面から向き合いながら9回のマウンドに向かう。後半戦は残り53試合。日本を愛し、ヤクルトを愛する助っ人がセーブを重ねた分だけ、15年以来6年ぶりの歓喜の瞬間が近づいてくる。(ヤクルト担当・小島 和之)

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