1999年1月31日に亡くなった元巨人投手で日本人初のNWA世界ヘビー級王者に輝いたジャイアント馬場さん(享年61)をしのぶ「ジャイアント馬場23回忌追善興行」が4日、東京・後楽園ホールで行われた。メインイベントは元全日本プロレス社長の武藤敬司(58)、現三冠ヘビー級王者の諏訪魔(44)らの6人タッグマッチだったが、いずれも馬場さんと会ったことがない選手ばかり。舞台裏では天龍源一郎(71)、ザ・グレート・カブキ(72)、グレート小鹿(78)ら馬場さんゆかりのレジェンドレスラーたちが一堂に会するシーンがあった。
メインイベントの6人タッグマッチは、武藤全日本の同窓会のような顔合わせとなった。13分51秒、シャイニングウイザードからの片エビ固めで河野真幸(40)を下した武藤は「馬場さん、ありがとう」とマイクアピールして締めたが、バックステージで「ここにいる全員が馬場さんと会ったことないんだ」と正直に話した。
馬場さんの弟子たちは、第2試合の「追善特別試合」に出場。小鹿、渕正信(67)、大仁田厚(63)、越中詩郎(62)組と嵐(高木功、59)、菊地毅(56)、大森隆男(51)、2代目タイガーマスク組が8人タッグで戦ったが、さらに豪華なレジェンドたちが舞台裏で勢ぞろいしていた。
開場前のリングサイド。マスコミもまばらな時間帯に、馬場さんイラストのワッペンをつけたジャージーを着て往年の個性派レスラーたちが続々と集まった。
トレッキング用ストックのような杖(つえ)を両手についた“風雲昇り龍”天龍、スキンヘッドながらも隈(くま)取りメイクを施した“東洋の神秘”カブキ(高千穂明久)、まだまだでかい“韓国の虎”タイガー戸口(キム・ドク、73)、馬場さんと同郷・新潟出身の“蒙古の怪人”キラー・カーン(小沢正志、73)、“力道山ジュニア”百田光雄(72)、“幻のモスクワ五輪代表”谷津嘉章(64)…。離合集散を繰り返すプロレス界だけに、馬場さんの生前なら実現しなかった顔合わせもある。
「懐かしいな」「おい、大丈夫か?」。それぞれが気遣う言葉をかけ合っていた。戸口は心臓と膝を手術。カーンは自転車事故がニュースになって騒がせた。百田は体調不良でこの日の試合をキャンセル。谷津は糖尿病で右足を切断して義足になっていた。
お客さんが入ってからは、天龍が代表して開会宣言。カブキはヌンチャクの舞いを披露して拍手を浴びたが、戸口ら4人は照明を落とした10カウントゴングの追悼式に参列しただけでリングには上がらず。生中継した日テレジータスにもほとんど映らなかった。
セレモニー後に記念撮影があると思ったが、あっさり退場。一堂に会したのは開場前の一コマだけだった。関係者だけが記念撮影した一枚をPWFの大隅良雄会長代理に提供してもらった。みんないい表情をしている。馬場さんの追悼大会は、「没20年追善興行~王者の魂~」(19年2月19日・両国国技館)と近年続いたが、「プロレス興行としては二十三回忌が最後で集大成」と遺族のHJTプロダクション・緒方公俊社長。一期一会のレジェンド大集合だった。(酒井 隆之)
◆大仁田VSタイガー異次元の遭遇実現
大仁田組と対戦した2代目タイガーマスクは、馬場さんの弟子で09年6月13日に46歳で亡くなった三沢光晴さんの代役。NWAインターナショナルジュニア王者だった大仁田が引退(1回目)した1984年に2代目タイガーマスク(三沢さん)がデビューし、王座を受け継いだ歴史がある。馬場さんのリングで異次元の遭遇が実現した。