ジュネーブ・モーターショーで発表されたボルボのコンセプト・カー3部作第3弾は、近未来のスポーツ・ワゴン。アップルのCarPlay を採用した、スウェディッシュ・モダンなインテリアにも注目だ。
文: 今尾直樹
ボルボが白鳥になる。ジュネーブ・モーターショーに出品されたコンセプト・エステートは、次のボルボはこうなります、という予告である。予告であるから、実際とは多少違う。それにしたって、ウ〜ン、カッコいいではありませんか。
スタイリッシュなこのスポーツ・ワゴンのコンセプト(試作車)は、今年後半に正式発表となる新型XC90のデザインを示唆している。現行XC90は大型SUVなので、次期型もそうなることが予想される。ようするに別種のクルマになるだろうけれど、少なくともフロント・マスクはこうなる。すなわち、横に寝かせたT字型に浮かび上がるDRL(Daylight Running Lamps)と、直立した長方形グリルの組み合わせが引き継がれるのだ。
長らく、ボルボといえば「四角」と同義だった。1970年代から90年代の終わりまで、スクウェアであり続けた。そういうボルボに共感する人は多かった一方、人間は飽きる動物でもある。21世紀に入って「丸」に転じた現在のボルボは日本市場でも好調で、昨年は前年比20%増の販売台数を記録している。輸入車ブランドとしては、VW、メルセデス、BMW、アウディ、ミニに続く6位につけている。それを再び変えて、どちからといえば「四角」に回帰するのだから、たいへんな勇気が必要だったに違いない。
男は40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持たなくてはいけない。そういったのは、かのエイブラハム・リンカーンだそうである。自動車も顔を変えるとなると、責任を持たなくてはならない。だからこそボルボは、昨年秋のフランクフルト・ショーからネクスト・ボルボのティーザー・キャンペーンをコンセプト・カー3部作というカタチで開始した。
第1弾のコンセプト・クーペは、フランクフルト・ショーで発表され、東京モーターショーのお台場でも展示された。第2弾のコンセプトXCは本年早々のデトロイト・ショーで公開された。2ドア・クーペ、クロスオーバーときて、最後をステーションワゴンで締めくくったわけだ。ちなみにエステート(estate)とは英国の自動車用語で、ステーションワゴンを指す。近未来のボルボがかくもクールになるとすれば、ボルボのイメージは一新されるに違いない。
コンセプト・エステートは、インテリアも注目に値する。ボルボの内装は、もともとスウェディッシュ・モダンの家具を思わせる。シンプルでありながら暖かみがあって、居心地がよい。リラックスできる。コンセプト・エステートでは、そういうスウェディッシュ・モダンデザインのモダン度を一気に引き上げている。操作系のインターフェイスにアップルのCarPlayを採用しているのだ。次期XC90は「4輪上での最上のiPhone体験」が味わえる最初期の自動車の1台になる。オーディオやエアコン等のスイッチ、ボタン類のかわりに、タブレット型のタッチパネルが配置される。鏡のようにフラットで、炭よりも真っ黒な空間。スティーブ・ジョブズが愛した禅的デザインである。
iPhoneだからSiriもついている。Siriとはなにか? もしご存じなければ、iPhoneのホームボタンを長押しして話しかけてみてほしい。「Siriってなに?」と。「Siriですか? 私ですよ」と音声で答える。星新一のショートショート「ボッコちゃん」みたいな会話をするボルボが年内にも走り始めるのだ。ちなみにCarPlayを搭載したフェラーリも走り始める。
自動車はいま激動の時代を迎えている。いまさらだけれどホントにそうなのである。向かっている先は、全自動運転だ。その話はまた別の機会に。
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