2022.09.05

旧統一教会問題、ニューヨークのアメリカ人が「まだ信じてるの?」と驚愕した根本的理由

日本の選挙運動や霊感商法に「?」

安倍元首相が殺害され、旧統一教会への恨みが犯行動機とわかってからも、ニューヨークにいるアメリカ人の反応は「よくわからない」という反応が大多数を占める。理由はいくつかある。1つは日本が途上国の村長選挙のような選挙運動(候補者の名前を覚えてもらうことに全力を注ぐ運動)を続けている日本の実態をアメリカ人が知らないこと。日本で旧統一教会の信者が“選挙ボランティア”で行っていた街宣車(選挙カー)からの拡声器による連呼、電話作戦、ポスター貼りなど、「候補者の名前さえ覚えてもらえればいい」とするような選挙運動はアメリカにはない。むしろ、そんな運動で候補者の名前だけを覚え、投票される政治のほうが恐ろしいからだ。

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もう1つは、霊感(霊魂)をアメリカ人は信じていないので、先祖や故人の霊魂を沈めるための「霊感商法」といわれても理解が難しいことにある。例えば、あるアメリカ人が、親しい人が殺されたり不慮の事故で亡くなったりして、深く気分が沈んでいたとしよう。そこへ「これを買わなければその人の霊が浮かばれない」となにかを買わせようとしても、そのアメリカ人は「は?」となる。霊や魂を信じていないからだ。ある意味で旧統一教会は、日本人の脆弱性を突いてきている。

ニューヨークのワールドトレードセンターはテロにより多くの死者を出した。しかしワールドトレードセンターの跡地に「霊や魂がうごめいている」と考えているアメリカ人はほぼいない。ニューヨークは移民や外国人が集まっている都市なので、9.11では世界中の仏教国出身者からも死者を出した。ただし、元々の仏教に霊魂は認められておらず、多くは生まれ変わる(輪廻転生)と信じられている。だから世界の仏教徒からは気味悪がられることなく、深夜でもワールドトレードセンター跡地は開放されている。

日本の場合は世界とは違い「霊魂」について事情が違う(霊能者もテレビに普通に出てくる)ので、旧統一教会などによる「霊感商法」への対策が必要になってくるのだろう。被害実態も広範囲に及んでいる。個人的には霊感商法をする団体へのプレッシャーになるのであれば、どんな取り決めでも賛成したい。日本での宗教は“イベント事”のようになっていて、けして日本人は宗教に対する免疫が高いとはいえないからだ。断っておくが筆者はいかなる宗教にも傾倒しているわけではない。

消費者庁による「霊感商法等の悪質商法への対策の検討会」が始まっている。しかしながら、悪徳団体にとっては、本の価格が1冊400万円で「法外」と定められれば、1冊4万円の本を100巻セットで売ることもできるし、本自体は無償提供で400万円は寄付や献金である、と逃れることもできる。結局のところ、寄付や献金自体を「契約」のようにクーリング・オフできるかどうかが消費者庁の範囲になるのではないだろうか。当然、それだけで終わらせてはならない。

それに加え、国や政府に勘違いしてもらっても困る。国民が怒っているのは「旧統一教会による被害者たちへの『被害金の返還』に国が支援や協力しなかった」ことではない。与党である自民党の政治家たちと旧統一教会との関係がズブズブで、被害者や被害者家族の救済ができなかったことに怒っているのだ。間違っても問題を「宗教団体からの『被害金』の救済」という風にすり替えないでもらいたい。

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