2022.04.18

落とせるはずの敵機を見逃し、「日本本土初空襲」を許してしまった零戦搭乗員の「深すぎる後悔」

神立 尚紀 プロフィール

米軍の搭乗員はほとんどが未熟なパイロットだった

この空襲を機に、ミッドウェー作戦に反対していた軍令部は島の占領を軸に作戦実施に積極的になり、陸軍もこの直後、ミッドウェー島攻略のため陸軍部隊を派遣することを決めた。

そんないきさつで同年6月、実行されたミッドウェー作戦の大失敗についてはよく知られている通りである。

日本海軍機動部隊の乗組員は半年にわたる南方作戦の疲れが癒えず、しかも飛行機隊搭乗員の補充交替が完了したばかりで、その訓練内容は基礎訓練の域を脱していなかった。各機種ともに開戦直前の練度には程遠く、戦力の低下は目に見えていた。水上艦艇も同様。機動部隊の総合力そのものが、知らぬ間に大きく目減りしていたのである。

それでいて、鎧袖一触(がいしゅういっしょく)であったこれまでの戦果への過信が緊張感を失わせ、機密保持にも作戦にも緩みを生じさせていた。米海軍は日本海軍の暗号書をほとんど解読し、全力をもって反撃態勢を整えていた。「エンタープライズ」「ホーネット」「ヨークタウン」の3隻の空母を中心とする米機動部隊は、日本艦隊を虎視眈々と待ち構えていた。

6月5日、日米機動部隊が激突したミッドウェー海戦で、これまで連戦連勝を重ねてきた日本海軍機動部隊は、「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」の4隻の空母を失い、壊滅した。米空母の損失は「ヨークタウン」1隻のみだった。

ドーリットル隊を発艦させた米空母「ホーネット」は、半年後の昭和17年10月26日、日米機動部隊が戦った南太平洋海戦で撃沈される
 

ドーリットル空襲がミッドウェー作戦にもたらした影響として、日本側の作戦目的が、山本長官の主張する米艦隊の撃滅か、軍令部の主張するミッドウェー島の攻略か、現場に徹底されないまま実行に移されたために、それが機動部隊司令部の判断をにぶらせ、明暗を分けたと指摘されることがある。また、ミッドウェー海戦における飛行機搭乗員の戦死者は、日本側が121名だったのに対し、米軍側は2倍近い約210名にのぼる。

米軍の搭乗員は、ほとんどが飛行経験2年未満の未熟な若いパイロットだった。しかしその若者たちが、優勢な日本艦隊に目にもの見せようと、死にもの狂いで戦いを挑んできたのである。日本側の少なくとも艦隊司令部は、気迫の面においてまず、この米軍搭乗員たちに遠く及ばなかった。

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