『おかえりモネ』、タイトルの「おかえり」に込められた「深い意味」

サイクルはめぐり、橋が架かる

NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』が終わった。素晴らしい朝ドラで、当分余韻が消えそうもない。本作は、東日本大震災から10年の節目に震災後の東北を描いたドラマでもあり、そこにはさまざまな困難もあっただろう。

しかし「非当事者がいかに震災後の東北に向き合えるか」は、まさにこのドラマが問いかけたテーマそのものだったのではないだろうか。ここではヒロインのモネがその問いにどう答えたのかを中心に、改めて『おかえりモネ』を振り返っておきたい。

先日完結した連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK公式ホームページより)
 

これまでにない「無力なヒロイン」

モネ(清原果耶)はわかりにくいヒロインである。少なくとも従来の元気で明るい優等生的なヒロインとは一線を画す。考え込むシーンも多く、元気はつらつというよりは、むしろ悩み多きヒロインだったと言えるだろう。というのも、モネはわだかまりを抱えた人物として登場するからだ。

モネは東日本大震災の当日、たまたま父の耕治(内野聖陽)と高校の合格発表を見に仙台に行っていたため、生まれ育った亀島を襲った津波を見なかった。モネは、妹の未知(蒔田彩珠)から「お姉ちゃん、津波、見てないもんね」という厳しい言葉を投げつけられ、何もできなかったという無力感に苦しむことになる。

その負い目が当事者である島の人びととの間に埋められない溝を作り、モネはいたたまれない思いで高校卒業と同時に島を出る。「そこにいなかった」という取り返しのつかない事実からくる罪の意識から、モネはいつか地元の人たちの役に立ちたいと強く思うようになる。自らの無力さに打ちのめされている状態から出発するヒロインは、明るく元気ではありえないのである。

「自然と生命の循環」というテーマ

登米でモネは気象予報士という仕事にめぐり合う。モネが気象予報士に惹かれた背景には「循環」という、このドラマの大きなテーマがある。

モネは登米で出会った気象予報士の朝岡(西島秀俊)から、

「山は、水を介して空とつながっています。海もそうです。永浦さんは海で育って海を知っている人ですし、山のことも知ろうとしてる。なら、空のことも知るべきです」

と言われる。

モネが気象予報士になるきっかけをつくった朝岡覚役の西島秀俊[Photo by gettyimages]

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