自殺者が後を絶たない…リアリティーショーは「現代の剣闘士試合」か

あまりに残酷な「感情労働」

女子プロレスラーの木村花さんが5月23日、急逝した。彼女は2019年5月からフジテレビ系列で放映中のリアリティーショー『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』に出演中だった。彼女の死には、放映中からSNS上で彼女に向けられた誹謗中傷が大きく影響したと報道されている。

フジテレビは番組の制作中止を決定した〔PHOTO〕『テラスハウス』公式HPより

木村さんの没後、ネット上ではSNSの誹謗中傷をめぐる論議が活発化した。フジテレビは「テラスハウス」の放送中止を発表し、遠藤龍之介社長は検証チームを立ち上げる意向を明らかにした。ネット上の批判の矛先は、いまや番組制作陣や他の出演者などにも向けられ、原稿執筆時点ではまだ「炎上」が続いている。

この事件を受け、高市早苗総務相は、インターネット上の誹謗中傷を巡る発信者の情報開示について制度改正も含めて対応する考えを明らかにしたが、この機に便乗して政府への批判を封じる意図があるのではと警戒する声が上がっている。

 

なぜリアリティーショーは野放しなのか

ところで私はそうした議論よりも、リアリティーショーが今なお多大な人気を博している事実のほうに今更ながら驚き、関心を持った。テレビ離れが指摘される若者たちが、「テラスハウス」にはハマっているというのだ。「テラハ世代」などという言葉もあるやに聞いた。

リアリティーショーそのものはかなり昔からある番組スタイルだ。海外でもこの手の番組は、ほぼ鉄板とも言うべき根強い人気がある。問題は、この番組スタイルがきわめてハイリスクであるという点だ。たとえばイギリスで2016年から2019年にかけて放映された『ラブアイランド』という番組では3人もの出演者が自殺している。韓国でも同様の番組で「モテずに孤立しているキャラ」設定を制作側から押しつけられた女性が、2014年に撮影現場で命を絶つ事件もあった。

精神科医として若者問題に長く関わってきた立場からすると、なぜいまだにこれほど“野蛮”な番組が野放しになっているのか、ほとんど理解を絶している。けっして大げさではなく、私にはこの手の番組が、現代によみがえった円形闘技場(コロシアム)にしか思えない。

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