仕事を通しての出会いやフラメンコ、美味しいものを食べること以外に、山口さんの人生を彩っているのは、何と言ってもパートナーの唐沢寿明さんだろう。31歳で結婚した山口さんに、ズバリ、「結婚はオススメですか?」と聞くと、聞いているこちらが赤面するような答えが返ってきた。

山口智子が考える「幸せな生き方」インタビュー前編はこちら

悩んだり迷ったりしても、しっかりと時間をかけることで見えてくる答えがある

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「人生において大事なのは、自分のスタイルを見つけることだと思います。結婚も、 〝人それぞれ〞の形があると思う。人を真似する必要はない。私はもちろん、世界で一番幸せだと思って生きてます。すっごく幸せです(笑)!

何を結婚の定義にするかにもよると思います。私は特殊な育ち方をしているので、血の結びつきを全く信用していない。私はずっと、『親』というものになりたくないと思って育ちました。私は、『子供のいる人生』とは違う人生を歩みたいなと。だからこそ、血の繫がりはなくとも、伴侶という人生のパートナーを強く求めていました。唐沢さんは、夫であり、家族であり、友であり、恋人であり……。唐沢さんと一緒に生きることは、ほんとうに楽しいです」

と、ここまで一気に話してから、「でも、なかなか結婚当初はそういう境地にはたどり着けないものですけどね」と言って優雅に微笑んだ。

「若い頃はきっと誰でも、『この決断は果たして正しいのか』と悩んだり迷ったりしますよね。でも、しっかりと時間をかけることで見えてくる答えがある。人間同士、たとえ何十年一緒にいても、ええ? こんな一面があったんだと驚くことばかり。人間にはバイオリズムがあるから、自分でも『同じ人間か?』と思うぐらい、ものの見方や判断ががらっと変わることがある。だから結論をそんなに焦ることはないんです。時が経てば、知らなかった世界がどんどん広がる幸せが待っている。

私も若い頃は、パートナーに対して、あまりにも趣味が違いすぎることにフラストレーションを感じることもありました。夫は私とは真逆の嗜好。彼の興味は、好きな仕事と車、あとブルース・リー、たった3種類だけ(笑)。でも、私は多種多様なことに興味津々で、一緒に旅をしても興味の対象が全く違うから、食べるとき以外はいつも別行動。

若い頃は、『なぜ同じものを見て感動できないんだろう』って思ってました。でも今では、私を好きなだけ放っておいてくれることに大感謝。私はのびのび自分の興味の的に邁進できるから。考えてみたら、私に何かを強制をしたこともないし、あれダメこれダメと、命令されたことは一度もない。いつも私が一番心地いい状態になるように、放っておいてくれる。私が旅の仕事で長期間留守にしても、彼は自分できちんと健康管理しながら、サバイバルしていてくれる(笑)。

彼曰く、『自分がしてほしいことを相手に押し付けるのではなくて、相手が幸せでいてくれることが自分の幸せ』なんですって。私が楽しく幸せでいることを望んでくれる人に出会えて、私は本当に幸せ。彼には心から感謝してます」

結婚して20年のあいだ、唐沢さんが山口さんに怒りをぶつけたり、山口さんが、その趣味の違いに対して憤ったりしたことはない。ただ、一度だけ、友人を交えて家で食卓を囲んでいるとき、食事の途中に一人でテレビゲームを始めた時は、『許せない』と怒ったと言う。

「『ありえない!』って、子供を躾ける親みたいに怒りました。彼も身に染みたのか、二度と同じ〝事件〞は繰り返していません」