2017.10.02

官僚の聖域で10億円を懐に入れた男を追え!外務省機密費事件の真実

国家のタブーに触れた二課刑事の闘い

「外務省機密費詐取事件」――この事件を機に、国民は領収書の要らないカネの存在を知った。霞が関に切り込んだのは一癖も二癖もある刑事たち。彼らの知られざる活躍を描いたノンフィクション『石つぶて』の著者・清武英利氏、そのドラマでメガホンをとる若松節朗氏、そして実際の事件で、自ら捜査班を率いた元警視庁捜査二課の萩生田勝氏が政官を揺るがせた大事件を振り返る。

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10億円を自分の口座に

清武 2001年3月10日、元外務省要人外国訪問支援室の松尾克俊室長が詐欺の容疑で逮捕されました。内閣官房報償費、いわゆる「機密費」が、外務省の一ノンキャリアによって流用された前代未聞の事件です。

萩生田 松尾は、'93年10月から'99年8月まで6年に及ぶ在任中、総理外遊時のカネ(機密費)を差配できる立場を利用していました。'93年11月の細川護熙総理の韓国訪問から、'99年7月の小渕恵三総理の中国・モンゴル訪問まで計46回、合計で約11億5700万円ものカネを経費として機密費から受領し、そのうち約9億8700万円を懐に入れていた(実際の立件額は約5億円)。

 

清武 その手口はひどいものでした。事前に随行員の人数や宿泊単価などを大幅に水増しした見積書を官邸に提出。機密費から旅費などが現金で支給されると、自分の個人口座に入金していたのです。外遊を終えると、偽造の領収書で精算し、帳尻を合わせ、実際に経費として使った以外のカネを着服していました。

若松 カネの使い道は、競走馬やゴルフ会員権の購入など趣味・娯楽への投資のほか、愛人と住むマンションなどにも惜しげもなくつぎ込んでいましたね。このニュースを知ったとき、言いようのない怒りを感じたことを覚えています。

清武 私は当時、新聞記者として事件の推移を見守っていました。今回、この事件をまとめたノンフィクション『石つぶて』にも書いていますが、事件を解決に導いたのは、ある刑事たちの存在が大きかった。それが警視庁捜査二課。刑事部のなかでも、贈収賄など政治家や官僚らの公務員犯罪や詐欺、背任などを追う課で、当時萩生田さんも所属されていましたね。

萩生田 私がいたのは、捜査二課の第四知能犯第三係。課内では「ナンバー」と呼ばれる9つの班の一つで、贈収賄事件を専門に捜査するところです。

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