「巨大不明生物」の"モデル"
ストーリーは単純だ。
巨大不明生物が東京湾に出現し、上陸する。
自衛隊が出動するが(そこに至るまで政権内でいろいろある)、歯がたたない。
科学者たちが巨大不明生物を倒す方法を考案する。
アメリカが核兵器で攻撃したいと言ってくる。
核攻撃までのタイムリミットが迫る……。
この映画のストーリーの下敷きになっているのは、どう見ても、2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故である。
政府、とくに首相官邸での動きは、事故当時の菅直人内閣の実際の動きをなぞっている。「原案・菅直人内閣」とクレジットしてほしいくらいだ。
総理の質問に何も答えられない学者たち専門家、アメリカからの圧力などは実際の3.11そのままだ。
政府サイドで物語の中心になるのは、総理大臣や大臣でも、官僚でもなく、若手の政治家だ。
長谷川博己演じる内閣官房副長官(政務担当)の矢口蘭童と、竹野内豊演じる、内閣総理大臣補佐官・国家安全保障担当の赤坂秀樹、そして石原さとみが演じる日系アメリカ人でアメリカ大統領特使のカヨコ・アン・パタースン。
現実の3.11当時の菅内閣にあてはめれば、長谷川が演じた官房副長官は福山哲郎、竹野内が演じた総理補佐官は細野豪志ということになる。
そっくりさんショーではないし、キャラクターとしてモデルにしているわけでもないので、それを意識して観る必要はない。ただ、主人公である副長官や補佐官は、福山や細野のような若手の政治家の就くポストであり、官僚ではないということだけは知っておいたほうがいい。
そして、もちろん、巨大不明生物は、メルトダウンして手がつけられなくなった福島第一原発が「モデル」である。
その退治の仕方も、給水によって冷却するしか方法がなかった原発事故とそっくりだ。