2013.12.09

特定秘密保護法でも「国民の知る権利」は現行法より悪くはならない!安全保障とのバランスから必要悪として受け入れるべきだ

特定秘密保護法がすったもんだの末、成立した。議会の一般論としていえば、十分に議論したほうが望ましい。今臨時国会は10月15日に召集された。安倍首相が10月7、8日にアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席するために設定されたスケジュールだ。反対論の立場からすれば時間不足は否めないだろうが、法律としてみればどうか。

反対論者は、この法律で国民の知る権利が侵害されるというが、現行法と比べてどうなのか。現行法があまり国民の知る権利をサポートしていないという意見もある。結論から言えば、特定秘密保護法は現行法より少しはましになっている。

しばしば、60年も秘密を明らかにしないのはおかしいという議論が行われる。しかし、そうした意見は何と比較しておかしいのかを指摘しないと、具体的にどうすべきなのか言えないまま、感情論になってしまう。マスコミの議論によくありがちだ。

現行法でも、守秘義務事項や公開対象外は永久に秘密

まず、今の法律における守秘の状況を明らかにしておこう。

秘密の保護に関する法律はいろいろある。公務員などについては、国家公務員法100条、自衛隊法59条、日米地位協定刑事特別法6条・7条、地方公務員法34条、独立行政法人通則法54条、国立大学法人法18条がある。また、公務員でなくても、医師などには刑法134条があり、そのほかにも弁護士23条など、広範囲の職業について守秘義務がかかっている。

これらの守秘義務は退職後にもかかるので、解除されることはない。つまり、60年どころか担当者が死ぬまで守秘義務がかかり、その引き継ぎ者も同じであるので、永遠に秘密が継続される。

1999年から情報公開法が施行されているが、守秘義務がかかっている秘密は情報公開の対象外となる。今の制度では、各省ごとの文書公開でかからない限り、永久的に秘密のままだ。

実際には、秘密が文書で残されたとしても、多くの場合には途中で廃棄されたりしていた。そこで、福田康夫政権の時に公文書管理法の制定が指示され、2009年から公文書管理法が施行された。それによって、保存や廃棄などの処理ルールが定められた。

それ以前には、担当者の裁量によって保存や廃棄が行われていた。筆者は役人時代に多くの公文書を永久保存文書にして国会図書館と相互貸出可能な大蔵省文庫に保存してきたつもりだ。「保存文書」にしない限り、廃棄される。意図的な廃棄よりもむしろ、紛失する文書のほうが多かったと思う。

公文書管理法ができてから少しはましになったと思うが、秘密が文書化され、紛失されないで保存され、廃棄されずに残ったものだけが「歴史文書」になり、一定期間後に公開されることもある。

ただし、「公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」と「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」については、「保存文書」でも、保存終了後の「歴史文書」であっても、何年経過しても公開の対象外になっている(情報公開法5条、公文書管理法16条)。これが日本の現状である。

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