Jアラートは誤報、「火星12」は撃ち落とせない…北朝鮮「ミサイル発射」で判明した残念な現実

半田 滋 プロフィール

スタンド・オフ防衛能力は長射程ミサイルの導入や護衛艦「いずも」型の空母化を意味し、岸田政権が12月に改定する国家安全保障戦略など3文書の目玉となる「敵基地攻撃能力の保有」を支える兵器類だ。兵器を揃えるだけでは敵攻撃はできないので情報を収集するための偵察衛星などの保有が欠かせない。

総合ミサイル防空は日本に落下する弾道ミサイルを撃ち落とすことだが、北朝鮮が今年発射した合計23発のミサイルは今回の「火星12」を除いてはいずれも変則軌道をとり、日本のミサイル防衛システムの無力化を見せつけた。こうした分野の強化に巨額の防衛費を投入しようというのだ。

北朝鮮のミサイル試射に対抗して実施した日米共同訓練(統合幕僚監部のホームページより)
 

後手に回った日本政府の内幕

北朝鮮のミサイルが日本を飛び越えたのは今回で7回目だ。北朝鮮が核・ミサイル開発を急ぐのは、米国の核戦力に対抗する抑止力とする狙いであることは、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」を通じて北朝鮮当局が明らかしている。

米国に一方的に攻撃され、政権が倒されたイラクやリビアの二の舞にならないための「強力な抑止力」としての核・ミサイル開発であり、同時に米国との交渉材料とすることで和平条約の呼び水としたい思惑がある。

日本の防衛省が長射程ミサイルを警戒するのは、日本を射程に入れるミサイルの精度を高めることにつながるためであり、今回のミサイルそのものが脅威だからではない。「飛来のおそれがない」と判断したにもかかわらず、政府はJアラートを鳴らした。

はっきり言って、日本など金正恩総書記の眼中にはない。日本政府の言う「北京の大使館ルートを通じた北朝鮮への抗議」とはファクスで抗議文を一方的に送りつけるだけであることは公然の秘密だ。政府による大騒ぎは国内向けであることを理解しなければならない。

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