4人に1人が「生涯未婚」の時代、「一生賃貸でかまわない」という人が、一体どんな末路をたどるのか? 沖氏はこう警鐘を鳴らす。
「一生賃貸派」の末路
「家を買うのは結婚してから」という通念が変わらないまま、4人に1人が生涯未婚という時代に突入すると、「一生賃貸派」が大量に増えることになりそうだ。
だが高齢者になると、現役時代と同じようには賃貸物件に入居できなくなってしまうという現実がある。賃貸入居には審査がある。そして高齢者の「審査落ち」はすでに社会問題化している。
高齢者が賃貸住宅を借りる場合の最初の関門は、入居時の家賃保証の問題だ。
20世紀の間、賃貸住宅に入居する際は、親や知人などに連帯保証人を頼むのが一般的だった。そうすることで家主は、借り手が家賃を滞納した場合には、保証人に対して取り立てを行うことができた。そのため保証人はちゃんとした職を持ち、社会的信用のある人に限定されていた。
しかし21世紀に入ると連帯保証人に代わり、専業の家賃保証会社が入居者から保険料を取り、滞納が出た場合に家主に対して家賃を立て替え払いする仕組みが確立された。今では新たな賃貸契約の7割以上が家賃保証会社を利用しており、残りが連帯保証人になる。
高齢者の場合も賃貸住宅に入居する際は家賃保証会社を頼むことになる。
しかし家賃保証会社は高齢者を嫌がる。
日本賃貸住宅管理協会による家賃債務保証会社の実態調査によれば、大家が拒否感を示す入居者の属性として、第一が障害者のいる世帯、第二が単身の高齢者、第三が外国人となっている。
単身高齢者は一人親世帯より、生活保護受給者並みに嫌われている。年代別審査状況の結果を見ても、年齢が高くなるほど入居審査を通りにくくなっていることが窺える。
なぜそうなるのか。
直接的理由としては、リタイア世代は現役世代に比べて年収が低いということがある。家賃保証会社は一定以上の収入がある人に対してはおおらかだが、所得が低い人に対してはきわめてシビアなのだ。
銀行預金の残高証明書など、それなりの資産があることを証拠として見せたとしても難しく、相続税を支払うほど資産がある人でさえ保証を断られてしまう。
このようなことになる背景には、高齢者の85%が持ち家に住む日本社会において、借家住まいを続ける単身高齢者が少数派ということがあるのかもしれない。
理由はともかく家賃保証会社で審査落ちとなれば、家主のほうも賃貸契約を拒否することになる。
そうなると連帯保証人を立てるしかないが、これは現役世代に限られる。大企業に勤めている息子でもいればいいが、独身で子供がいなければそれもできない。