2015.11.03
# 雑誌

常勝西武vs野村ID「1993年ヤクルト日本一」を語ろう あの奇襲はすごかった!

野村克也×川崎憲次郎×石毛宏典
週刊現代 プロフィール

川崎 古田さんは三塁打を打ち、一死三塁。続く広沢さんの内野ゴロの間に生還した。打者が打った瞬間、打球に関係なく三塁走者がスタートする「ギャンブルスタート」で、2点差に広げる貴重な4点目が入った。

石毛 あれも古田の独断だったと聞きました。

野村 古田の足は速くない。でも西武内野陣はかなり前に守ってきた。俺はギャンブルスタートのサインは出さなかった。

石毛 高いバウンドのゴロだったので、ギャンブルスタートをしなくても生還できた。でもあの走塁は、ここ一番で、どうしても1点欲しい場面で使うために、春のキャンプから磨いてきたそうですね。それだけに、古田は「ここでやらなくて、いつやるんだ」と考えた。

野村 前年の第7戦、広沢がまずいスライディングをして勝ち越しに失敗したんだ。そこから走塁への意識を高く持つようには言ってきた。

石毛 我々は、ID野球と一線を引いて、闘争本能を大事にしてきた。でも飯田も、古田も、野村さんたちに叩き込まれた教えを消化した上で、土壇場で、自分の本能を信じていましたね。

野村 プロ野球選手が「指示待ち族」では困る。プロ意識を持った、自立した選手に育てるのも監督、コーチの仕事だよ。

のむら・かつや/'35年京都府生まれ。'54年に南海に入団し、捕手として世界初の三冠王。ヤクルト監督として3度日本一。阪神、楽天でも監督を歴任
かわさき・けんじろう/'71年大分県生まれ。ヤクルト在籍中の'98年に17勝をあげ、最多勝投手に。'00年に中日に移籍し、'04年に現役引退
いしげ・ひろみち/'56年千葉県生まれ。西武の黄金時代に日本シリーズに11度出場し、8度の日本一に輝く。オリックス監督などもつとめる

「週刊現代」2015年11月7日号より

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