広島・長崎への原爆投下は必要なかった
田原: 今回、オリバー・ストーンさん、そしてピーター・カズニックさんにインタビューする機会が持てて幸いに思います。まずうかがいたいのは、僕は以前ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官にインタビューしたことがあって、「あなた方は広島と長崎に原爆を落とした。そしてまったく何の罪もない一般市民を大量に殺した。この責任をアメリカはどうとるつもりなのか」と聞いたんです。
そうしたらキッシンジャーが、「広島と長崎に原爆を落とさなければ日本は本土決戦をやるつもりだった。本土決戦で何百万人、あるいは一千万人以上の日本人が亡くなるはずだった。原爆を落とすことでその人数をかなり減らしたんだから、むしろ日本はアメリカに感謝すべきだ」と答えた。それについてどう思いますか?
ストーン: キッシンジャーの見方は私たちの見方とはまったく違います。私たちは広島・長崎への原爆投下は必要なかったと思っていますし、キッシンジャーは何もわかっていない人だと思います。彼はノーベル平和賞を受賞しましたが、同時に南米各地でのアメリカの残虐行為に関わったということで、戦争犯罪人として入国できない国もたくさんあるようです。
広島・長崎への原爆投下というのはソ連への威嚇のために落とされたものであって、日本が降伏したのも原爆によるものではなくソ連が参戦したことによるものだと私たちは主張しています。日本はすでに敗戦は決まっていたのですから、原爆投下の必要はありませんでした。
二つの世界大戦と原爆投下』
著者:オリバー・ストーン & ピーター・カズニック
早川書房 / 税込み2,100円
◎内容紹介◎
歴史上、ファシストや全体主義者を打倒したアメリカには、「自由世界の擁護者」というイメージがある。しかし、それは真の姿だろうか? 2度のアカデミー賞に輝く、過激な政治的発言でも知られるオリバー・ストーンによれば、それは嘘だ。じつはアメリカはかつてのローマ帝国や大英帝国と同じ、人民を抑圧・搾取した実績にことかかない、ドス黒い側面をもつ「帝国」なのだ。その真実の歴史は、この帝国に翳りの見えてきた今こそ暴かれねばならない。最新資料の裏付けをもって明かすさまざまな事実によって、全米を論争の渦に巻き込んだ歴史大作。(全3巻)