キュウ

2018年10月28日

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昨年11月、オフィス北野事務所ライブの公開審査会にて、満票で所属を勝ち取ったキュウ。しかし事務所の一連の流れを受けて約半年で退社、そして今月から新たにタイタンへの所属が決まった。めまぐるしく変わる環境だが、現在開催中の「M-1グランプリ2018」では準々決勝へ初めて駒を進め、彼らは着実に次のステージへ進もうとしている。12月に第二回単独公演を控える今、その独特とも評される漫才へのこだわりから、彼らなりの芸人のあり方を垣間見た。

取材・文・撮影 / 岡本みっく
宣材・ライブ写真提供 / TOWA
(@towaphotography)

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”売り物にならない”っていうよさもあるんじゃないの?

──まずざっくりとお二人のこれまでを伺いたいと思います。

ぴろ 僕は養成所を出てなくて、ソニーが最初なんですよ。

──ソニーから入ったんですか。

ぴろ コンビを組んで東京に出てきたのが25歳の時で。「でも養成所とかお金払って行くのもなあ……」と。それですぐ始められる事務所を探したらソニーっていうのがあって。「いいじゃんいいじゃん、キャプテン渡辺いるじゃん」って。

──あははは(笑)。

ぴろ ちょうどその頃キャプテンさんを「R-1ぐらんぷり」で観て面白いなと思ってて。AMEMIYAさんも冷やし中華で人気でしょ。「AMEMIYAもいるじゃん」ってなって(笑)。

──それでソニーへ(笑)。

ぴろ そう。だから同期とかいないんで、始めた時期が同じぐらいのやつとか、あとは年齢が一緒のやつとかを同期ってことにして、勝手にタメ口で(笑)。めちゃくちゃですよ。でももう仕方ないなと。

──上京する25歳まではどのように過ごされていたんですか?

ぴろ 大学は1年休学してフラフラしてたんで、23歳ぐらいで卒業して、そこからバイトしながら漫画描いてたんですよ。

清水 持ち込みしたりしてね。

ぴろ そうそう、小学館に持ち込んだり。

──そのために地元から東京へ?

ぴろ うん、名古屋から出てきて。やっぱり持ち込まないと、ダメだったらダメですぐに結果が出てほしいので。だから描いては東京に来て持ち込んでっていう感じでしたね。あれ、すごい緊張しますよ(笑)。

清水 『バクマン。』とかで見てはいるけどね。

ぴろ 編集者に電話して、淡々と話が進んで、「何時に持ってきてください」って言われて。着いたら会社の1階のスペースで待たされて、そしたらすごいボサッとしたような人が来て、パパッと見て。読むのめっちゃ早いんですよ。もう『バクマン。』そのまんま。全然ダメでしたけどね。とにかくめちゃめちゃ大変でした。疲れるんです。絵描くのも好きだし、話を考えたりするのも好きだけど、漫画描くって、やっぱり漫画描くことが好きじゃないと続けられないなと思いました。じゃあ、あとはお笑いしかないなと。もともと何かを作る仕事がやりたくて、中でも絵描くか、お笑いだったんで、そこでお笑いが残ったから、「まあやっちゃうか」って。

──でもそのタイミングでよく相方が見つかりましたね。

ぴろ 大学の友達なんですけど、その時就職した会社を辞めそうになってたんで。そいつが来てくれなかったら、一人で東京行く勇気はなかったかもしれないです。

──漫画を描いてる間、お笑いのような活動はやっていたんですか?

ぴろ ギャグ漫画的なのは描いてました。一番はお笑いがやりたかったんですけど、やる勇気がないから漫画でなんとかやろうとしてたんです。でも、全然自分で喋ったほうが早かった(笑)。

清水 また細かいんだよ、描くものが。

ぴろ こんなに労力かけてコマ割りで伝えるよりも、普通に言葉の間で伝えたほうが早い。しかも描いてた漫画が、万人ウケしないというか。これは今のキュウのネタもそうなんですけど。「誰をターゲットにしてるのか?」っていうのは持ち込んだ時に編集の人からすごく言われましたね。そのターゲットが見えないから、どこに向かっているのかわからないって。でも、「それはそうだろ」と思ってました。そんなの考えてもないし。「いいなー、面白いなー」と思ったやつを描いてただけだし。でも商業的な考えだとやっぱり「売り物にならない」とはっきり言われて。「そうか?」と思って。「こういうのを見たい人もいるんじゃない?」「”売り物にならない”っていうよさもあるんじゃないの?」とか思ったりして。ちょっと尖ってたんですけど(笑)。だってポップなものならすでに名作はいっぱいあるしね。本屋さんに行ったらなんでも読めちゃう。

──キュウさんのネタでもそういうことを言われたりしますか?

清水 まあネタ見せだと「普段ウケてる?」っていうのはすごく言われますね。「これウケるの?」って心配されるというか。

ぴろ 「めっちゃええやん」っていうネタに関しては特にそうですね。僕は変なのが好きなので。変なネタ、変な会話。変じゃないと嫌なので。で、そうするとポップじゃなくなる。だから必然的に、狙って、そっちに行っちゃってるっていうか……行かせてもらってる感じ……?

一同 あははは(笑)。

ぴろ いやあ、まあでも、僕は漫才のほうがいいですよ、漫画より。

 

お笑いを始めるに当たって

──清水さんがお笑いを始めようと思ったきっかけは。

清水 僕はもうずっとお笑いとか役者に憧れてましたけど、最初は多分、志村(けん)さんなんですよね。

──そうなんですね!

清水 ああいうおもしろ演技みたいなのをしてみたいっていう。そこからオンバトとか見て、漫才に憧れたりして。ルート33さんとか好きでしたね。

ぴろ 結構ポップですよね。

清水 わかりやすいのが好きでしたね。すごく恥ずかしいんですけど(笑)。

ぴろ 今キュウでやってるのと全然違うからね。(笑)。

清水 で、自分でもやり始めるんですけど、結局そういうわかりやすいポップなのをやっても、もうやってる人いるんで。それはもう売れるわけねえぞ、と気付いて。変なことやらなきゃって思い始めた時、隣にぴろのコンビがいて(笑)。面白いなと思えたんですよね。

──NSC時代はどんな感じだったんでしょうか。

ぴろ 聞くところによると、相当ポップなやつですよね。仔ライオンっていう。

清水 仔ライオンは……あれは僕がコミカルな顔と動きで……(笑)。

ぴろ つかみのギャグみたいなのもあったよね(笑)。

清水 つかみのギャグでもないですけど、「仔ライオンです、お願いします」って言った後に、「清水ライオンです」って言うだけなんですけど。

ぴろ 清水ライオンっていう芸名だったんですか?

清水 いや、芸名は清水誠なんだけど。

ぴろ あ、そうなんですか(笑)。じゃあギャグじゃないですか。

清水 でも面白みはないから(笑)。

ぴろ お客さん的にはただ、「へえ、清水ライオンなんだ〜」っていう(笑)。

清水 まあだからお調子者ではあったかもしれないですね。でも全然ウケなくて、だんだんスレていったというか。

──NSCにはいつ入られたんですか?

清水 大学4回生の時に通い始めたので、22歳ですかね。

──入学以前にもお笑いはされていたんですか?

清水 いやいや、全然。漠然とやりたいなと思いながら、高校卒業したら大阪に出ようと思ってて。そしたら教師一家やったんで、「大学は行ってよ〜」と言われて。じゃあ大阪の大学行って、仕送りもらいながらお笑いやっちゃお〜なんて思ってたら、意外と単位取るのが大変で。3年でようやく単位を全部取って。

──あとはNSC(笑)。

清水 そうですね。だからそれまでみんなが遊んでる中、一切遊ばなかったですね。あ、でも部活は空手をやってました。これからお笑いを始めるに当たって、生半可な気持ちでは絶対無理だと思って。

ぴろ 精神を鍛えるためにね。

清水 俺は3年間は絶対やると決めて、それを途中で投げ出すようならお笑いはやらない!と。

──古風なやり方ですね。

清水 ただただ真面目なやつなんですけど(笑)。

ぴろ でも真面目にやってる分、遊んでるやつらがものすごく嫌いになっちゃって(笑)。それでね、心の闇がどんどん。

清水 そう。

──そういうタイプには見えないですね。

清水 もともとそんなやつではなかったんですけどね。

ぴろ 勝手に自分で(笑)。

清水 だから最近はね、平場でもみんなと一緒に楽しむようにしてるんですけど、ちょっと前まではね、斜め後ろのほうに立ってて。「そんな楽しんでるけど、お前らも売れてねえんだからな?」とか思いながら(笑)。

──意外ですね。見た目の印象でしょうか。

清水 本当ですか? じゃああんまり言わないほうがいいのかな(笑)。

ぴろ でも俺が出会った時はもっと怖い顔してました。

清水 そう? それは先輩ぶってたんじゃない(笑)。

ぴろ 筋肉とか見せたりして威圧してた(笑)。

清水 そんなことしてた!? バカじゃんただの(笑)。でも本当にその見た目とのギャップについてはよく言われますね。もっと明るそうというか。騒ぎそうとか。

──夏BBQやってそうです。

清水 それは黒いからでしょ(笑)。

ぴろ でもやっぱりキュウだったら清水さんのほうが人当たり良さそうって言われますね。

清水 だけど実際はぴろのほうが話しやすいんですよね。

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ソニーは”シェルター”

──おふたりは先輩後輩の関係ですよね。

清水 そうですね、僕が13年目で。

ぴろ 僕が8年目ですね。

──普段の会話も敬語ですか?

ぴろ ほぼ敬語ですね。

清水 敬語じゃないのはネタの時ぐらいですかね。

──清水さんは養成所で言うと何期に当たりますか?

清水 NSC大阪28期なので、この辺で言えばヤーレンズ・楢原とか、ニュークレープ。東京だと11期でチョコプラ、シソンヌとか。でも僕も途中で役者とかやってた時代もあるんで。

──NSC卒業後に?

清水 はい。あんまり言いたくはないんですけどね(笑)。NSC卒業して別のコンビでbase受けに行ったりしたんですけど、全然受からないし、ゴングショーもすぐダメだったりで、本当腐ってて。月に数回、下手したら1、2回ライブ出るだけの時もあって。こんなことやってても絶対無理だよなと思って、ちょっともうお笑い辞めようと。で、役者の方向に進もうと思って東京の役者の事務所に行くんです。

──じゃあ一度お笑いは辞めたつもりで、役者になるために上京したんですね。

清水 そうですね。でも役者をやってたら、コミカルな演技をしてしまいがちで。ちょっとそれは邪魔だな、と。エキストラみたいなものなんだから、そんな目立とうとしないで、みたいなことを言われた時に、やっぱり自分はお笑いがやりたいのかな、と。そんな時、役者仲間の同級生がソニーで芸人をやってるから、もし芸人にまだ未練があるんだったら1回話してみたら?って紹介してもらって、それでソニーに入ったんです。

──じゃあソニーには1人で入ったんですか?

清水 1人で入って、1人で始めたんですけど、でも怖くなっちゃって。大阪で少しコンビ組んでたやつをすぐに呼びました。そいつも東京出たいって言ってたんで、じゃあもう1回やろうぜって。そこから3年ぐらい。

──事務所ライブなどをメインに?

清水 そうですね、当時はあんまり外のライブ出ようとはしなかったですね。出ようとしなかったというか、ソニーの先輩たちもあんまり外に出てるイメージがないですね。

ぴろ あの時はあんまりなかったですよね。

清水 mixiで「フリーライブに出ませんか?」みたいなのが来てたんですけど、なんか胡散臭いなって思っちゃうところがあって。今思えばね、別に行っといてもよかったなっていう話なんですけど。でもやっぱり外のライブとか出るっていう流れも、当時のソニーではあんまりなくて。「ソニーの人って箱(SMAの劇場・千川Beach V)もあるしソニーの中だけでやってるよね」なんて周りからも言われてた時代ではありますね。

ぴろ ソニーの人は外でいろいろ痛い目に遭って、くじかれて集まってきてるから、もうなんかシェルターみたいな(笑)。

──あははは(笑)。

ぴろ ちょっと心が震えてるんですよ、恐怖で。だから外に出るのが怖いっていう。

清水 ロビンフットのおぐさんとかかな。Twitterとかでいろんな外の人と接点持って。急に絡んで行ったりとかして。

ぴろ 湘南(デストラーデ)さんが認定行ったり、錦鯉さんとかが外のライブでウケだしたりして、びーちぶ(Beach V)だけのウケじゃないっていうのを証明しはじめた時に、びーちぶを出ることはすごい大事なことだっていう雰囲気が広まった気がする。

一番近くて。清水さんしかいなかった。

──現在のキュウ結成に至ったのはどういう経緯だったんでしょうか?

清水 一応結成は2013年5月なんですけど、まずその1年前ぐらいに僕が前のコンビを解散したんです。で、そこからちょっとたぶらかすんですけど。

──たぶらかすというのは(笑)。

清水 「ちょっとやってみよ」みたいな。「やってみようとは思ってんだよねえ」ぐらいの。

ぴろ その時僕はまだ別のコンビでやってて。

清水 まあ解散するだろうと、しばらく待ちながら僕はピンで続けたんです。でもそのコンビで単独をやることになったんで、「ああ、まだ続けそうだな」って思ってたんですけど、その単独の直前にね。

ぴろ 一週間前とかですね。

清水 ぴろの相方が音信不通になっちゃって。

──ええ!?(笑) そんなことあります!?

ぴろ そう、飛んじゃって(笑)。さっき言った、就職して辞めそうになってたところを誘った大学時代の友達なんですけど。

清水 病んでたのかな? まあでも今幸せそうだけどね。

ぴろ うん。

清水 「今日はキングオブコント見るぞ~」って呟いてた(笑)。

ぴろ ちなみに俺と解散してお笑い辞めてからも、会社を辞め続けてる。

一同 あははは(笑)。

ぴろ 毎回聞くたびにね、仕事が変わってるんですよ(笑)。めちゃめちゃいいやつなんですけどね。

清水 まあそういうことになったので、今こそやろうかみたいな感じで声をかけて。その単独をするはずだった日を、ただ芸人にいっぱい出てもらう『ぴろのぴっぴろぴっぴっぴー』っていうライブに変更して。そこでユニットで1回ネタをやったんだよね。

ぴろ そうそう。それが本当にキュウとして初めて作ったネタでしたね。

清水 バカ長かったけどね。どっちも歌うだけみたいな。

ぴろ めちゃめちゃ長かった。

清水 でもそれですぐ組まずに、そのあとしばらくピンでやってたでしょ。

ぴろ あ、そうだ。ピンがやってみたくて。

清水 「ピンもやってみたいんです」って言うから、なんだよ~とか思ったんですけど、そのあと事務所ライブで一番下のホップに出て、タイムオーバーで上がれず、すぐ駆け寄ってきて「やりましょう」って(笑)。別にスベったわけではなかったんですけどね。

ぴろ そうですね。「まあ~、でもやりましょっか」みたいな感じで(笑)。

──ピンではどんなことをやっていたんですか?

ぴろ 絵描いて、フリップやってました。

清水 僕は、シェー空手っていう(笑)。一応オフィス北野に所属する時にも披露したんですが。

ぴろ 空手をやってから「シェー」ってやるやつなんですけど。

清水 そのネタは、R-1の1回戦は絶対に通るっていう(笑)。

ぴろ 絶対に通る。

清水 2回戦は絶対に落ちるっていう(笑)。

ぴろ 2回戦は絶対に落ちるね。ちょうど1回戦に受かるぐらいのネタなんですよね。

清水 だからまあ、そこからはずっとキュウですね。

──じゃあはじめは清水さんのほうから一緒にやりたいという形だったんですね。

清水 そうですね。

ぴろ もともと違うコンビの時から仲は良かったんで。家に行ったりね、遊んだりしてたんですよ。プレステとか。

清水 ゲームしてたね。

ぴろ 映画観たりとか。

清水 好きな漫画がジョジョだとか、音楽はミスチルだとか。コンビ名の由来も、ミスチルのアルバムのタイトル『Q』ですし。

ぴろ ジョジョ展も一緒に行きましたね。

──もともと趣味が合うんですね。

清水 そうですね。

ぴろ だから、面白いなって思う部分が一緒じゃないと絶対コンビは無理だなって思う。

清水 人のネタを観てても、面白かったなって思うのは割と似てるかな。

ぴろ その辺はすごい大事な気がする。コンビって。何をしようとしてるのかっていうのが両方ともわかってないと、多分ネタできないと思う。だから選択の余地はなかったですね。一番近くて。清水さんしかいなかった。

 

まるでネタを作ることが偉いとか

──ネタ作りはどのように行っていますか?

清水 もう、ほぼほぼお任せで。気持ち悪すぎる時だけちょっと言うんですけど。

──気持ち悪すぎることもあるんですね(笑)。

清水 「なんだこれは……」って。

ぴろ それで「確かに」ってハッとした時はやめて、「いや、でも意外と」「こういうの逆に」「あえて」っていう時は、それを突き通します。とりあえずでも1回やってみたいんだよ、って。

清水 結局やってみないとわかんないっていうのはあるかもしれないです。

ぴろ でもネタ作る時は一緒にいるんですけど、やっぱり意見がないと作れないですね。

──完成したネタをまるっと渡すという形ではないんですね。

清水 あ、違います。さまぁ〜ずさん方式で。

──あははは(笑)。

清水 まあ聞かれた時にちょっと考えたりしますが、基本はある程度できたものを一緒に見ながら、少し言うぐらいですかね。本当にやりたいことがわかってない状態で意見しても、邪魔しちゃうんじゃないかっていう怖さはありますし。

ぴろ 自分でもこのネタはどこに進めばいいのかわかんないうちに渡しちゃうと、よりわからなくなるのかなとは思って。それなりにこっちで固めてからでないと、議論の余地もないだろうし。

──ネタ書く側とそれを待っている側で、関係性が上下になったりというようなことはないですか?

ぴろ フラットだと思いますね。

清水 うん。これは僕が、ゼロのほうが言うのもあれなんですけど、そういうのはいかんなと。

ぴろ いや、だって、やりたくてやってるのにどっちも。まるでネタを作ることが偉いとか嫌なことだとか言ってるようなものなので。

清水 ネタ作りをしんどいっていう人はそうなるのかな。

ぴろ しんどいけど、「しんどい」と「やりたくない」は違う。しんどいけど、やりたいからやってるわけで。「え、なに、やりたくないの?」って思っちゃう。当たり前にやることだし。

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M-1のネタって無駄がない

──台本はがっちり書くタイプですか?

ぴろ そうですね、セリフはほとんど一字一句書きますね。

清水 それが全部この携帯に入ってますね。

ぴろ 最初はノートに端書きみたいに書いて作ってましたけど。ファミレスで。

──長い間なんかも書いてあるんですか?

清水 たまに「、、、」って書いてあって、ここは”長く”なんやなとは思ったり。

ぴろ 一拍置くところで点を使ったりはしますね。「そうなんだよ、」の時と「そうなんだよね」っていう「ね」がついてる時とかも、文字で決めて。そんなことする必要はないんですけど、決めてないと逆にやりにくいですよね。

清水 たまたま僕も前のコンビの時から、がっちりセリフを一言一句決めてやるタイプだったので。そういうのもあったのかもしれないですけど。

ぴろ 観てるほうは気にならないと思うんですけど。

清水 ただそうすると、予期せぬことが起きた時の怖さはありますけどね(笑)。それでも一瞬止まって、何事もなかったかのように続けるっていう。

ぴろ 予期せぬことが起きる怖さと戦い続けてるんですよね。

清水 まあ続けるしかないよね。

ぴろ しょうがないよね。

清水 あんまりネタから降りるのが好きじゃないんですよ。ぴろもそうかはわからないですけど。

ぴろ いや、そうですね。僕はネタが好きなので。ネタじゃない部分で笑い取るのが別に美しくないと思うんですよね。

──トラブル的な。

清水 しっかりやりたいというか。まあきれいごと言うなら、せっかく観に来てくれた人がいるからね、いつもと変わらないしっかりしたネタを観てもらいたいっていうのもあって。

ぴろ 僕らM-1世代なので。M-1のネタって無駄がないじゃないですか。

清水 そうそう。だから普段そうやって遊びを取り入れてる人がM-1でも同じことやるのか?っていうのはずっと思ってましたね。

ぴろ M-1ですごくいいネタって、本当にすごくいいネタなんですよね。それが一番いいものだと思ってるので。だからどれだけ長いネタになっても、極力無駄なところは最初から省きたいんですよ。そういう意味で、ネタから降りたりするのなんかは、愚の骨頂で。無駄でしかない、ネタに対して。その寄り道もネタに入ってるならいいんですけど。だからアスリートの筋肉のような無駄が削ぎ落とされたネタが一番美しいっていう理想ですね、ひたすら。なおかつ、変なネタ。

清水 だから噛んだりね、飛んだりとかは。

ぴろ 絶対にしたくないから、けっこう練習はしますね。

清水 やり慣れたネタとかだと1回合わすぐらいですけど、最初はきっちり。

ぴろ 練習で飽きるぐらいやりますね。だから絶対に自分たちの言ったことでも笑わないようになるし。

清水 最初笑っちゃうね。

──そうなんですね。確かに、冷静に変なこと言ってますからね。

ぴろ そう、変なこと言ってるから。「何言ってんだろうな」って思って。

清水 言葉もそうだし、ルパンのネタわかります?

──はい、はい。

清水 ぴろは最後にこうやってる(セクシーなポーズ)だけでも、目が合ってしまうと笑いが止まらなくなっちゃうんですけど。

ぴろ ああいうところは毎回危ないんですよ。これ本番でも笑っちゃうかもなって。

──キュウさんでもそんなことあるんですね。

ぴろ だからネタ合わせの時に笑っておいて。もう飽きるぐらい合わせるっていう。「あ、ここ笑っちゃうんだ」っていうところを気をつける。

──言葉だけでなく、所作というか、清水さんの目線とか、ぴろさんの手の動きとか、あれもいつも同じ動きなんでしょうか?

清水 2人でかっちり決めてるわけではないんですけど、各々で決めてますね。

ぴろ 動きで記憶してたりするので。

清水 遅いなりにリズムをそれで取ってたりとか。だから動きも毎回一緒だよな。

ぴろ うん。からくり人形みたいに、ネジ巻いて曲が流れだしたら毎回一緒の動きになるというか。

清水 だからまあコントの方と同じですよね。漫才を名乗ってはいますけど。

ぴろ いかに漫才で、コントみたいにできるかっていう。だからリアリティもないし、生なのかどうかもわからないし、ライブだけど。

自分たちの存在をやりたいネタに寄せていく

清水 あと、僕だけだと思うんですけど、最初苦しんだのが、ネタの時に人が違う役を演じるわけじゃないですか。それってコントの場合はいいとしても、漫才でそのあと平場に出た時にまったくの別人になってるっていうのは、どうなのかなあと。もう最近は割り切ってるんですけど、それで平場で一言も喋れない時もあったりして。当時からぴろは「気にしなくていいんじゃないですか」とか言ってましたけど、どうしても最初は気にはなっちゃってましたね。

──確かに観てるほうも多少はびっくりしますからね。こういう人だったんだ!って(笑)。

ぴろ そう、観てるほうがびっくりするかなって思うと何もできないんで、もうびっくりしてもいいって思って。

──悪いびっくりじゃないですしね。それも面白さのひとつですし。

ぴろ 思ってたのと違ったってなるのも、最初だけだし。

──始めた当初から演じる系のネタでスタートしてるんですか?

清水 まだボケ・ツッコミみたいなのを分けてやってた時は、わりと自分のそのままの感じでやってたかもしれないですね。2人とも同じぐらいの人格のやつをやり始めた時に、(観てるほうに)戸惑いが生まれたというか(笑)。

ぴろ そうね、自分がないから。

清水 それで衣装もね、個性を消すっていう方向に。

──あ、そういうことだったんですね。

清水 はい、2人同じ衣装にして、ちょっと暗めな紺色で。

ぴろ 自分たちの存在をとことんやりたいネタに寄せていって。だから取っ付きづらいというか、ちょっとミステリアスな感じで、寄って来づらい感じにはなっちゃったんですけど。

──ネタ観てると確かにそうですよね。

ぴろ 絶対そうなんですよ。

清水 共演者の方も、どういじっていいか難しいんだと思う(笑)。

ぴろ 困惑させるし、扱いづらいし、あんまりよくないやり方ではあったんですけど。まあでもそれがやりたいですから。

──その方向性でお二人の意見が合致したということなんですか?

ぴろ それは多分、俺の意向ですね(笑)。

清水 まあでも、自然となんとも思わなかったですね。まあいいかと。組む時も、自分はもうプレイヤーになるつもりでいたんで。もともと前のコンビで書いてはいましたけど、「(ぴろは)面白い本書くなあ」と思って声をかけたんで。

ぴろ ポップじゃないんで、僕も清水さんも。だから無理矢理明るくなろうとしたり、明るい服着たり、個性を出そうとしたり、無駄にあがいても逆効果だと思うんです。ある程度、最初に持たれるような印象に身を委ねて、そっちに完全に染まっちゃったほうがいい、それが逆に個性になるからと思って。

 

あのネタのカラクリはよくわからない

──「めっちゃええやん」というネタはいつ生まれたんですか?

清水 これはですね、再結成してるんですよ、僕ら。

──キュウとして?

清水 はい。2013年5月に組んだんですけど、1年ぐらい経って解散して、その半年後に再結成してるんですよ。

ぴろ 僕は始めて3年目ぐらいだったので、いろんな可能性を試してみたくて。ひとつのコンビでずっとやるのもなと思って解散したんです。

清水 それでザ・ボケみたいな人と組んでね。

ぴろ ツッコミをやってみたくて。

清水 僕はピンで半年ぐらいなんとか続けたんですけども、もう本当に辞めようと思っていたところ、(スーパー)3助さんが「思い出作りで一緒にユニットやんない?」みたいな話を持ちかけてきて。なんか楽しそうだなーなんて思って、それをおぐさんに話したら、「じゃあ清水と組みたいやつ集めていっぱいネタするライブやれよ」ってなったんです。で、おぐさんプロデュースで8人ぐらい集めて。でも僕はそこで誰と組むつもりもなくて、そのまま辞めようと思っていたんです。そしたらそのライブの前日にぴろから電話がかかってきて……「解散しました」って(笑)。

──すごいタイミング!

ぴろ たまたまね(笑)。むこうから解散したいって言われて。

清水 本当たまたまそういうタイミングが来て。「うわあ、まじか〜」って。「もうこれで辞めるつもりだったのに、またあるのか!?」と思って。まあできることならやりたかったですし、それで自然とまた再結成する流れにはなったんですけど。結局、そのライブでは誰とも組まず、周りも「え〜!」って感じで、そのあと再結成して、周りももう「なんだこのやろう!」みたいな(笑)。

──出来レースだったのかと思いますよね(笑)。

清水 それで再結成したのが2015年5月ぐらいだったんですけど、その頃M-1に向けてまたネタ作りしてたらたまたま「めっちゃええやん」ができて。

ぴろ 「めっちゃええやん」が出てくるネタ自体は、解散する前からあったんです。今のとは全然違うんですけど。そこで「めっちゃええやん」っていう言葉が面白いなって思ってたから、再結成した時にそれを使ってまた違うネタを作ってみようと。

清水 じゃあそのあとに言葉足してみたらどうなん?とか言って。

ぴろ その時、ネタ帳に別のネタでマイナーなスポーツの名前をいっぱい書いてて、そこからできたのが最初です。

・・・・・・・

ぴろ「マイナーなスポーツを始めて、そこで1位を取ろうと思うんだよね」

清水「その考え、めっちゃええやん」

ぴろ「そのスポーツがキンボールっていうんだよね」

清水「めっちゃええやん、全然知らんやん」

・・・・・・・

清水 これは、1位を取るっていう文脈で「全然知らん」ことが「めっちゃええやん」なんですけど、その「全然知らんやん」には褒めてる側面と貶してる側面があって。

ぴろ この言葉の組み合わせがなんか面白いっていう。たまたま逆のこと言ってるから。

──確かに言ってることは間違ってないんだけど、言葉としては褒めてるし貶してるし、真反対が共存してますよね。

ぴろ ファミレスで考えてて、清水さんがトイレ行った時に「めっちゃええやん、全然知らんやん」ってところまでがバッて出てきて、トイレから戻ってきた時に「これどうですか?」って。清水さんのトイレの間にその一節ができたんですよね。それでやってみたら、あのネタいいねってなって。

清水 そうね。

ぴろ 当時ライブシーンで優勝の常連で、人気者なヤーレンズさんと対決して勝ったりして。今ほど仲良くもなかったので、「ヤーレンズ倒そう」ってライバル意識がありましたね。

清水 そんな時期もあったね。

ぴろ 結局その年のM-1は1・2回戦ではめっちゃウケて、3回戦でめっちゃスベったんですよ。

清水 あれは気持ちで負けてたよね。「うわ、ルミネだ……」っていう。

ぴろ そうそう。でかいし。慣れてないから。

清水 周りは有名な人ばっかりいるし(笑)。

ぴろ まだ生まれたてで皮膚もふにゃふにゃなんで、その威圧感とか空気にあの時は耐えられなかったですね。

──子鹿のような(笑)。

清水 今思うとだいぶ雑なんですけどね、やり方も。「めっちゃええやん」って言う時、体の揺れが手に伝わってずっと揺れてたり。

──2年前の「めっちゃええやん」と今のとでは、間の尺が全然違いますもんね。

清水 倍ぐらい違いますね。どっちが正しいのかはわからないですけど、まあ今のほうがウケるしっていうことなんですけどね。あのネタのカラクリはあんまりよくわからないですよね。

──意図的ではないんですか?

清水 まあ意図的に遅くもしていきましたけど。

──なぜウケるかのカラクリはわからないと。

清水 うん。ちゃんとわかる?

ぴろ キンボールはわかるじゃないですか。

清水 わかるよね。

ぴろ でもウケなかったら、なぜウケないかもわかるじゃないですか。「全然知らんやん」っていうのが(文脈的に)合ってはいるから。「めっちゃええやん、全然知らんやん」っていう組み合わせがなんか面白いっていう感覚的な部分の笑いがある以上、その感覚が伝わらなかったらもうウケないし。今はその感覚的な部分を行ききってるから、キンボールの時にはあった理に適った部分がないんですよ。だからより意味わからなくて。

清水 初めて観る人の前でやることも今なかなかないので。どこが面白いのか、僕も説明できないですね。

ぴろ 説明できたほうがいいんでしょうけど、できないのでしょうがないですね。だからもう「意味わかんないんですよねー」って言ってます。

──あははは(笑)。

ぴろ 前にニュークレープのナターシャさんの『ネタつくるライブ』に出させてもらった時、楽屋でAマッソの加納さんにも「あれどこから生まれたんすか?」って聞かれたんですよ。で、その時も同じような説明して、「でも今は僕もなんでああなったのかわかんない」っていう話をしたら、「ほんまっすね」って言われて(笑)。最終的に「顔おもろいんちゃいます?」って、清水さんの顔の話になっちゃった(笑)。

 

そんなに言うほど観られてんのかっていう

──YouTubeチャンネル(『キュウ お笑いオフィシャルチャンネル』)を開設されていますが、始めたきっかけは何だったんでしょうか?

ぴろ ソニーを辞めてから、自分らの力でなんとかしなきゃいけないっていう気持ちが強くなったのもあって。

清水 始める時はけっこう議論したよね。

ぴろ やっぱりネタバレにはなるので、ネタを守りたい考えはあったんですよね。でもそんなに言うほど観られてんのかっていうと、別に、ねえ。いっぱい観られるほど有名だったらそれはそれでいいわけですし。何も知られてない、有名じゃない自分らが、何か観てもらえるきっかけが作れるなら、絶対そっちのほうがいい。それと、普通にサービス精神でもあります。やっぱ「観たい」と思った時に、観たい。ライブで観て、面白いなと思って、YouTubeで動画ないかなって調べてひとつもなかったら、そこで興味が終わるんですよ。そこで止まって、忘れられるんです。それはもったいないので。最低限、「他にもネタ観てみたいな」と思って調べた人が観たいぐらいの量は上げとくか、って始めたんです。

──でも芸人さんでYouTubeをやろうという人はなかなかまだ少ないですよね。

ぴろ どんだけでもサボりますからね、芸人は。人がサボってることこそやったほうがいいんですけど。実際、このYouTube上げてることで、今度某ネタ番組にも呼んでもらって。

──おお!

ぴろ もともと北野を辞めた時に、前の単独のDVDとかをテレビ局の方たちに送ってたんですよ。北野のマネージャーに連絡先聞いたりして。その時はあんまり返事はなかったんです。でもこの間、某ネタ番組の総合演出の方がYouTube観ながら寝ちゃったらしく、たまたま起きた時に関連動画で俺らがネタやってたんですって。それを観て、面白いからキュウっていうコンビを呼びたいって会社で言ってくれた時に、「そういえばDVDが来てましたよ」って。僕がDVD送ってなかったら、まず連絡先を聞くっていうひと手間が生まれて、もしかしたら誘われてなかったかもしれない。偶然ですけど、動けば繋がるなって。

──誰がどこで見てるかわかりませんね。

ぴろ ね。まじっすか!?って。

──売れたらテレビに出てネタやめたいっていう方もいらっしゃると思うんですが、キュウさんは売れたらどの方向に行くんでしょうか?

ぴろ ネタやりたくない人多いですよね。ネタはやってないとダメだろうと思っちゃうんですけどね。

清水 作るの好きですし。

ぴろ そうなんです。だから結局何かを作って、それがお金になったり評価されたりしたいなっていうのはあります。作ったもので試されたい。試される世界が好きで、だからアドリブで面白いことを言ったりできるのもすごいと思うんですけど、作ったもので評価されるのが一番嬉しい。

清水 僕は、たまたま例えば人間の部分を面白がっていただけたら、そういうバラエティとかもいっぱい出たいですけど、そうじゃなくてもこうやって漫才で演じてる時間が好きなので、お芝居やらせてもらったりとかできたらなあと思ってます。で、単独みたいなのも続けられたら。

──今月から事務所もタイタン所属になり、早速12月に単独ライブがありますが、意気込みはいかがですか。

ぴろ 前回もハーモニックホールでやって、埋まり切らなかったので。まあ芸人がいくらか来てくれて埋まったんですけど、今回はお客さんで満席にしたいなと思って。ハーモニックホールが埋まるように、今回もう一度ハーモニックホールでやろうと思います。

──ファンの方もみんな待ち望んでいると思います。

ぴろ あの、ライブのアンケートとかで「出して欲しい芸人」でキュウって書いてくれてる人がいるらしくて、いまだに「本当かなあ?」って思うんですけど(笑)。

──本当ですよ(笑)。

ぴろ いや、嬉しいんですけどね(笑)。

──あんまり実感がないですか?

清水 ないですね。

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《直筆アンケート》

左:ぴろさん 右:清水さん

 

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第ニ回単独公演『時空無きモノ』
2018年12月14日(金)開場 19:00 / 開演 19:30
会場  関交協ハーモニックホール
料金  前2300円・当2500円 ※入場は手売り優先
https://tiget.net/events/34189

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