ジャニー氏の功罪は表裏一体
それでも擁護論が出るワケ

 こういう話をすると決まって、「確かにジャニーさんのやったことは許されることではないが、だからと言って、ジャニーさんの功績のすべてを否定するのはおかしい」ということを言う人たちがいる。

 ただ、これはおかしな話だ。このような「功罪」が指摘されている人は、基本的に「功」と「罪」が完全に切り離されているからだ。

 例えば、日本経済の発展に大きな貢献をした企業を一代で成長をさせた天才経営者がいたとしよう。この企業があったおかげで、多くの労働者が働けた。地域振興もできた。

 そんな天才経営者が亡くなってから、会社が調査をしたところ未曽有のスキャンダルが発覚。小児性愛者で20代の頃から60年間に及んで、13歳から15歳の女子中学生数百人への性加害を繰り返してきたのだ。その驚愕の事実を外部の専門家チームも調査の結果、認定した。

 こういう状況ならば、「人としてはとんでもない性犯罪者だったけれど、経営者としては多くの人を幸せにしたわけだから、そちらの功績まで否定するのはおかしい」という話もまだ理解できるかもしれない。

 ただ、ジャニー氏は違う。「功罪」が同じ土俵というか表裏一体なのだ。

 アイドルビジネスで絶対的な地位を築きながら、その地位を利用して、許されないことをやっていた。どんなに素晴らしいステージを作ろうが、国民的なヒットソングを作ろうが、その「功」を実現するための土台のところで、数百人に及ぶ少年たちに性加害をするという「罪」を負っている。功罪ともに否定をされてしまうのも無理はないのだ。

 では、なぜこんな少し考えればわかることなのに、「やったことは許されることではいが、ジャニー氏のつくった文化まで否定するな」的な擁護論が出るのか。

 やはり大きいのは、被害者が「男」だからだ。13〜15歳の少年たちとはいえ、男なのでちょとジャニー氏にいたずらをされるくらいでピーピー騒ぐなという体育会系的なノリの日本人が多いのだ。実際、調査報告書にもこんな記述がある。

《ジャニーズJr.の間で、「昨日ジャニーにやられていただろう。」などと冗談めかしたり、武勇伝的に話したりしていた》(調査報告書19ページ)
《他のジャニーズJr.たちも「性加害を受け入れるのが当たり前で通過儀礼だ。」という話をしていた。「高校に入る頃になれば、性加害は止むからそれまでの我慢だ。」という話もあった。》(調査報告書22ページ)

 体育会運動部の新人いじめやシゴキのようなノリで捉えていた被害者もいるということだ。ただ、「マッサージと称して体を撫でまわす、性器に触る、ディープキスをする等のわいせつ行為や、口腔性交により射精させる、肛門性交をしたりさせたりする」という犯罪の内実は性加害なんて生ぬるいものではなく、「強姦」に近い。

 残念ながらジャニーズのアイドル育成は、このような卑劣な「強姦」の現場になっていた。そして、それを行なっていたジャニー氏は小児性愛という性嗜好異常だった、と外部の専門家チームが認定したのだ。