「人工地震だ」「不審車両の情報です!」「外国人の窃盗団がいる」――。

 災害時に出回りやすい根も葉もないデマ。年明け早々、北陸地方を襲った能登半島地震でも相次いでSNS上に投稿・拡散された。

 能登半島地震のデマで目立つのが「ニセの救助要請」だ。例えば、実在する住所と共に「息子が挟まって動けない。助けて」などと書き込んだ投稿が拡散された。だが実際は、その住所と無関係の人物によるでたらめなものだったと分かった。それが発覚した時、その投稿はすでに削除されていた。

 危機管理情報サービスを手掛けるSpectee(スペクティ、東京・千代田)の村上建治郎・最高経営責任者(CEO)は「能登半島地震の直後、救助要請の投稿はSNS上で数え切れないほど見られた。だが本物だと確認できたのは10件あるかないかだった」という分析結果を明らかにする。過去の災害時には、こうした類いの投稿はあまり見られなかったという。

 こうした新たなデマが生まれやすくなっている要因として、X(旧ツイッター)の仕様変更が大きいとの見方が大勢だ。Xは23年から課金ユーザーを対象に、投稿が一定回数以上表示されると収益を得られる仕組みを導入した。この表示回数(インプレッション)稼ぎを目的に、耳目を集めやすい投稿が横行したと見られる。

Xの仕様変更に伴い、インプレッション稼ぎを目的としたデマが横行したと見られる(写真:AFP/アフロ)
Xの仕様変更に伴い、インプレッション稼ぎを目的としたデマが横行したと見られる(写真:AFP/アフロ)

 救助要請の投稿は、人命救助の力になりたい人々の正義感をあおりやすく、瞬く間に拡散される。それに加えて能登半島地震では「(投稿をコピペする)『コピペゾンビ』が結構目立っている。大本をたどるのが難しくなり、結局投稿内容の真偽が分からないケースも少なくない」と村上氏は指摘する。

この記事は有料会員登録で続きをご覧いただけます
残り1299文字 / 全文1993文字

【5/16締切!】春割・2カ月無料 お申し込みで…

  • 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
  • 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
  • 日経ビジネス最新号12年分のバックナンバーが読み放題