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未解決事件を追う

“25口径、4発の弾丸が胸や腹に命中…”「餃子の王将」社長射殺事件を迷宮入りさせた京都府警の“失態”

“25口径、4発の弾丸が胸や腹に命中…”「餃子の王将」社長射殺事件を迷宮入りさせた京都府警の“失態”

2021/05/07
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 2013年12月19日午前5時45分――。

 株式会社王将フードサービスの大東隆行社長(当時72歳)は、京都市山科区の本社駐車場に車を停めた。2000年に社長となってから、毎朝午前5時半から6時に出社するのが日課だった。ゴム長靴に履き替え、廻りを掃き清める。その後、周囲の道路に水を撒く。

「王将フードサービス」本社前(著者提供)

 京都・四条大宮の1号店からスタートした「餃子の王将」は、関西を中心に737店舗(2020年3月31日現在)を全国展開する巨大飲食チェーンである。大企業のトップが、冬場ならまだ暗いうちに出社し、率先して汚れ仕事を行う美談はかっこうのネタだ。実際、マスコミでも何度か取り上げられた。

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「誰よりも早く一番乗りが大切。仕事は朝が勝負ちゃうのん? 意欲と勢いと活気でやるもんや」(『週刊ポスト』2013年12月13日号より引用)

 近隣住民にも社長の早起き・掃除はよく知られていたという。 

急所に命中していた4発の銃弾

 この朝も、いつものまめまめしい姿が見られるはずだった。が、車から降り立った直後、至近距離から25口径の小型拳銃が発射され、4発の弾丸が急所の胸や腹に命中した。脅しとは考えにくい。殺すつもりとしか思えない。午前7時、社員が昏倒する社長を発見したが、病院に運ばれ死亡が確認された。遺留品は4個の薬莢だけで、鞄や財布などは一切荒らされていなかった。車内に百数十万円以上あった現金も手つかずのままだ。

株式会社王将フードサービスの大東隆行社長(当時72歳)

 凶行の現場となった山科区は、観光客でごった返す京都市中心部とは違い、ひとつ山を越えたごく普通の住宅街である。とはいえ、JR京都駅から東海道本線に乗車するとわずか5分で山科駅に到着するほど近い。激坂のため自転車での行き来はしんどいが、原付バイクがあれば、市内中心部から容易に移動できる。通りに人がいない早朝、アクセスが簡単な現場、決まった時間に出社してくる社長……計画そのものは簡単だし、逃走もしやすい。

 新聞報道によれば、京都府警はこれまで延べ22万人を超える捜査員を投入し、現在も50人以上で捜査態勢を敷いているという。しかし、実行犯に繋がる決め手は、残念ながらみつかっていない。殺人事件は発生直後の捜査が明暗を分ける。もはや新情報はほとんどないだろう。迷宮入りになってもおかしくはない。