シボレー・トレイルブレイザーEXT LT(4AT)【試乗記】
おおらかなアメリカン 2003.03.04 試乗記 シボレー・トレイルブレイザーEXT LT(4AT) ……391.6万円 2001年9月販売開始以来、日本市場において輸入SUV販売台数1位の「トレイルブレイザー」に、ホイールベースと全長を410mm延長し、4.2リッター直6エンジンを搭載する「EXT LT」が追加された。『webCG』エグゼクティブディレクターの大川悠が報告する。拡大 |
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陸の王者
2年弱前に導入して以来好評のシボレー大型SUV、「トレイルブレーザー」に新たに加えられたのがEXT版。多分「Extension」から来た言葉だろうが、その名前のとおりにボディとホイールベースをより長く伸ばしたバージョンである。
もともとライバルはフォードのメインラインSUVたる「エクスプローラー」。これの日本仕様は7座ボディを売り物にしている。これに対抗すべく、またアメリカ内ではエクスプローラーの上に位置するエクスペディションと張り合うためにも、ホイールベースは一気に41cm以上引き延ばされ、全長も41cm長くなり、それぞれ3280mmと5300mmになった。この分をまるまる3列目シートにあてたというわけだ。
これを機会に、定評あるストレート6の4.2リッターに加えて、伝統の5.3リッターV8も載ることになった。
まさにわが国のシボレーSUVとしては、陸の王者ということになる。
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大船のキャプテン
駐車場で対面したEXTはやはり大きい。外寸は5300x1900x1930mmもある。つまり、GM系SUVの中では一番偉いはずの「キャデラック・エスカレード」より大きいのだ。特に伸びたホイールベースの恩恵で、リアサイド・ドアの後端は、もはやリアのホイールアーチに切り取られることなく真っ直ぐに降り、これを開ければ最後端の3列目シートにアクセスできる。ただし2アクションで2列目シートを畳んだ方が出入りは楽だ。また3列目も畳めるし、2列目は65:35で分割可倒、全部畳めば、何となく4畳半ぐらいに見える空間にはなる。ただしこの大船を任されたキャプテンの仕事は、そんなに難しいものではない。すくなくとも狭い都心や住宅地に入り込まない限りは。
本当ならもう少し視界がいいと助かる。シートを一番上に上げてもボンネット先端は見えないし、そこに補助ミラーがあるわけでもない。また長い尻尾がどこまで出ているのかも運転席ではわかりにくい。ここにも補助ミラーかバックソナーが欲しいところである。
だが一旦サイズを掴んでしまえば、後は安楽な移動機械である。テスト車はEXTでも一番安価な(391.6万円)LTの6気筒版だった。従ってエアコンは全自動ではないし、サンルーフも付かない。シートはファブリックである。
それでも重量は2.3トン近くあるが、わざわざ新設計した一種のモジュール・ユニットであるストレート6は、とても気持ちのいい回転感触と、この種のクルマにぴったりしたトルク特性を与える。せいぜい2000rpm回転前後で、普段は充分に賄える。しかもフルタイム4WDではないから、いつも4輪を回している必要はない。普段は「2HI」で充分、さもなければ「A4WD(Auto 4WD)」を選ぶならもっと安全だ。路面の急変で後輪が急にスリップしたとき、即座に4WDに切り替わるからである。
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普通の道ではとてもソフト
都内の普通の道路や、高速道路を流している分には気持ちがいいクルマでもある。ストレート6固有のビートを奏でながら、ソフトな乗り味が伝わってくる。245/65-17のミシュラン製M+S(オールシーズン)タイヤは、すごく重そうに見えるが、当たりは柔らかい。舗装路の継ぎ目などでは、よくできた乗用車よりも柔らかく受け止める。
唯一難点を示すのが、舗装の大きな荒れや補修など、かなり凹凸の激しいところを比較的速く抜けようとしたときで、このときはフレームとは別体のボディは、一瞬わなわなする。
今回はオフロードはためさなかったが、日本で通常に遭遇する路面においては、このクルマはまったく問題ないはずである。ちょっと大きすぎるのを除けば。
基本的には大きなキャビンを、ペットを含めた家族や友人同士で贅沢に使う。しかも何となくくつろいで、なごやかに、おおらかな気分で移動する。
トレイルブレーザーはそんなときにうってつけのクルマなのである。
(文=大川悠/写真=荒川正幸/2003年2月)
大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。