師匠も“想定外”だった!? 大相撲九州場所10日目(18日、福岡国際センター)、横綱日馬富士(30=伊勢ヶ浜)が大関稀勢の里(28=田子ノ浦)を一方的に押し出して完勝。勝ち越しを決めて「弱い気持ちに打ち勝って一番一番臨んだわけですから。正直、ホッとしてます」と安堵感を漂わせた。

 秋場所の取組中に右目を強打し「右眼窩内壁骨折」で途中休場した。再び強い衝撃を受ければ失明の危険があるため、2か月近くも本格的な稽古を自粛。今でも右目の痛みは完全に消えていない。当初は師匠の伊勢ヶ浜親方(54=元横綱旭富士)でさえ、出場には消極的だった。少々のことでは休場させない師匠として知られ、過去には日馬富士が足首のケガで負けが込んでも「休場? 歩いてるじゃん」と一蹴したこともある。

 日馬富士の強い希望で出場が決まった後も、むしろ師匠のほうが「オレは勧めてないんだけど、本人が『どうしても出る』って言うから…」と周囲に不安を口にしていたという。そんな心配をよそに、果敢に頭から当たる相撲で“第一関門”の勝ち越しをクリア。2敗を守り、優勝戦線にもギリギリで踏みとどまっている。

 普段は辛口の伊勢ヶ浜親方も「たいしたもの。普通だったら怖くて(頭から)いけない」と愛弟子に脱帽するばかり。今年1年間、まるでいいところがなかった横綱が、最後の最後で意地を見せた格好だ。