顔色を失って立ち尽くす。表情がかたまって凍りついた。土俵上に舞う、おびただしい座布団の数が異常な事態を示していた。日馬富士が3日連続で平幕力士に敗れて金星を配給。通算38個目。序盤5日目にして黒星が1つ先行だ。
「ア〜ア。足がついていかなかった。体は動いているけど、結果につながらなくて。まぁ、勝った方が強いわけだから」
西の支度部屋。横綱は不機嫌に黙り込むわけでもなく、自嘲気味に口を開いた。1場所15日制が定着した昭和24年以降、3日続けて金星を与えたのは9例目。平成15年名古屋場所での横綱武蔵丸以来、14年ぶりの屈辱となった。
横綱初挑戦の阿武咲に手玉に取られた。横綱がまわしにこだわらず圧力をかけると、相手はいなしながら左へ回り込む。頭が下がったところを押さえつけられてはたかれると、右手を土俵につきながら前方宙返りのように大きな弧を描いて1回転。背中にべったりついた砂が哀れさを誘った。