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「最も貧しい大統領」の温情がアダ…南米小国が助けたシリア難民「出国させろ」の皮肉

 ウグルアイは昨年、5家族、42人のシリア難民を受け入れたが、1年もたたずして多くが出国を希望する事態になった。中東から遠く離れた南半球にある人口は300万人あまりの国にはモスクひとつない。小さな国の好意に頼ったものの、現実を見た難民たちの落胆は大きかったようだ。

 10月に入り、難民が暮らす海辺の小さな町で事件が起こった。AP通信によると、首都から150キロメートル離れたその町で、ミハーイ・アルシェビリさん(51)が、自宅で自らの体にガソリンを浴びのだ。ウルグアイ政府の関係者が訪れ、相談に応じていたときのことだった。

 他国が受け入れる証明を求めるアルシェビリさんに担当者が、政府に権限はないことを説明していたという。アルジェビリさんは政府は菜園程度の農業しか認めないと不満もぶつけ「羊も牛も、土地もない」とこぼしていたという。

 アルジェビリさんの家族は妻に加えて子供が15人もいる。メディアの取材に、働ける家族は皆働いているが得られる収入はわずかで電気代など生活費が高いと訴え、「ウルグアイは好きだし子供たちも学校に行っているが食費は高く、とてもやっていけない」と悲観した。

「清貧さ」ゆえの支援

 幸い点火には及ばなかったものの、抗議の焼身自殺を意図したとも思わせる出来事は、食料などを分け与え、あたたかく迎え入れた地元住民をあぜんとさせた。

 靴工場に務める女性は「全くひどい話。ほんとうに腹立たしい」と憤る。ある女子学生は「ウルグアイはそもそも難民を受け入れるような経済状況じゃない」と、政府を批判した。

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