習独裁の幕開け

政治的恩師、威容支えた101歳2人の長老 江沢民一派粛清の達成感を共有

 習近平国家主席の威容ばかりが目立った第19回中国共産党大会だが、日本のメディアがノーマークの長老たちも、さまざまな思いで大会に臨んでいたはずだ。そして陰の主役は間違いなく、出席者で最高齢の宋平・元政治局常務委員である。宋氏は101歳、第1回中国共産党大会が開催される4年前の、1917年(中華民国6年)に生まれた。(夕刊フジ・10月30日掲載)

 習氏の亡き父、習仲勲元副首相との関係が密接で、胡錦濤氏に共産主義青年団の幹部育成プログラムへの参加を薦め、上へ上へと引き上げてきたとされる政治恩師でもある。さらに宋氏、胡氏、習氏の3人は、清華大学が母校という共通点もある。

 実のところ、習政権が発足後、再び活動を活発化させていた宋氏に中国メディアからの注目は高まっていた。

 昨年10月、6中全会(中国共産党第18回中央委員会第6回全体会議)の直前、宋氏が清華大学に姿を現した際にも、「習氏の政治的な立場を支持しているサイン」などと報じられた。中国の一部メディアから、「胡・習連盟の流れが加速している」との記述が見られるようにもなったが、その背景には宋氏の存在があったのだ。

 温家宝前首相にとっても、宋氏は政治的恩師とされる。この度の党大会では席を横に並べ、杖を突く宋氏が座る際には、介助要員2人が傍にいるにも関わらず、75歳の温氏自らが立ち上がり、手助けする様子をカメラが子細にとらえていた。

 今から15年前の第16回共産党大会は、宋氏のまな弟子の胡政権が発足し、温氏も序列3位に昇格した時期だった。ところが、宋氏は大会への出席を拒絶したとされる。最高指導部とそれに続く人事は、表向きは世代交代が進んだが、親族を含む江沢民派が大多数を占めていた。中央軍事委員会主席の座も手放そうとせず、党や軍をいよいよ私物化する江氏に、9歳上の先輩として我慢ならなかったのだろう。

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