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【こんにちは!あかちゃん 第10部】「非婚で産む」ということ<5完>子どもの権利を第一に

 《この連載がスタートした1日、兵庫県明石市が全国で初めて、嫡出子かどうかを尋ねる項目を削除した出生届の使用を始めた。婚外子への差別解消を求めた最高裁の判断を受けた措置。法務局に是正を求められ、4日になって中止を発表したものの、社会は少しずつ動き始めている》

 都内で勤務する弁護士の島田さくらさん(27)も結婚せずに産んだ息子(1)を育てている。司法修習中に妊娠が分かり、弁護士の道を諦めかけたが「自分で決めたのだから最後まで頑張りなさい」という故郷の父に背中を押された。

 融通の利く職場で、早く出社する代わりに午後7時すぎには退社して保育所に向かう。そんな日々の中、法律家の立場から結婚のあり方に矛盾を感じている。

 結婚は、子どもを養育するために最も安定した手段としてつくられた制度だろう。経済的な理由ならともかく、結婚していないから産まないというのは本末転倒ではないか。それに、離婚して立派に子育てしているひとり親はいくらでもいる。

 少子化を本気で考えるのなら、産む選択肢を広げ、育てやすい環境を整えてほしい。「結婚したい人たちは結婚でき、そうでない人も尊重される。自由に選べるのが一番いいのでは」。そんな社会へ、動きをもっと早めてほしいと思う。

 《海外はどうだろう。多様なライフスタイルを認めるスウェーデンでは、婚外子の出生割合が54%に上る。日本は1975年の0・8%からわずかに伸び、2011年に2・2%となった。大きな差の背景に何があるのか、大阪大学大学院教授の高橋美恵子さん(社会学)に尋ねた》

 スウェーデンは事実婚や同性婚も、結婚した男女と同じ権利を保障しているという。非婚のシングルマザーも選択肢として定着しているのだろうか。

 「婚外子が多いのは事実婚が一般的だから。一緒にいたい二人が共に暮らすうちに子どもが生まれ、じゃあ結婚となることが多い。結婚自体は愛情確認の意味合いが強いです」

 「子どもは2人の親に育てられるのが大前提。生まれると養育者2人を決めます。法律婚でない場合は父親を確定する手続きが必要で、分からなければ国がDNA鑑定などで探し出します。幼いころから親の責任について教育され、女性1人で産む状況はむしろ起こりにくいといえます」

 養育者2人は結婚やパートナー関係が破綻しても、共同養育する義務が続く。例えば母親の再婚後も養育責任は継父には移らない。子どもの福祉に主眼を置いたシステムだ。どのように築き上げたのだろう。

 「人権意識が高まる中で1969年に国が『ライフスタイルの中立性』という理念を示しました。個々人が自立した社会を目指し、法は中立に、全てのライフスタイルを尊重するという考え方です。時間をかけて婚外子差別を解消し、事実婚や同性婚も認めてきました。もはや『標準的な家族』はありません」

 ライフスタイルが多様化し、子どもが生まれる環境もそれぞれ。出発点で差がつかないように社会が補完するのがスウェーデンだ。日本とは社会的、文化的背景が異なるという意見もあるが、学べる点もあるはずだ。

 「スウェーデンでも同棲は反社会的だったし、既婚女性は専業主婦になるのが当然という時代がありました。女性解放運動と労働力不足も手伝って、70年代から共働きへ転換します」

 「同時に少子化を見越して保育や育児休業を充実させるなど、性別にかかわらず仕事と家庭を両立できる社会づくりを進めてきました。差別や偏見がゼロとはいえませんが、子どもの権利と福祉を最優先する点、人を排除しない仕組みは優れています」

 「いずれも草の根運動に始まり、法律が後を追い、新たな制度が人々の意識を変えました。日本も変われるはずです」


=2013/10/05付 西日本新聞朝刊=

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