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メッシはマラドーナの「神域」にどこまで迫ったか

編集委員 武智幸徳

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ディエゴ・マラドーナ(49)とリオネル・メッシ(22)。アルゼンチンが生んだ新旧スーパースターの比較論がこのところ、かまびすしい。2人が6月に開幕するワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に監督と選手として一緒に出場することも、何かと興味をかき立てているようだ。

「神の手ゴール」と「5人抜き」

マラドーナは1986年メキシコW杯で祖国を優勝に導き、アルゼンチン国民から「神様」としてあがめ奉られる存在となった。同大会準々決勝のイングランド戦で見せた「神の手(ハンド)」のゴールと「5人抜きドリブルシュート」はサッカー史に永遠に語り継がれる"怪挙"と「快挙」だろう。

続く90年イタリアW杯でも満身創痍(そうい)の体を引きずってチームを準優勝させた。その後、薬物に手を出したり、自宅前に押しかけた記者に空気銃を乱射したり、太りすぎて死にかけたりしたが、それでもアルゼンチン国民は大恩あるこの英雄を愛してやまない。

メッシは今、当代最高の選手としての地位を築きつつある。所属のFCバルセロナを国内、欧州、世界王者へとステップアップさせ、今季のスペインリーグではポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナルド(レアル・マドリード)らを抑え、得点王争いでトップを走っている。

小柄でともに左利き

この2人、確かに共通点は多い。身長はマラドーナが166センチ、メッシが169センチ。小柄でともに左利き。マラドーナが欧州で最初にわらじを脱いだクラブもFCバルセロナだった。典型的なアタッカーであり、ドリブルで敵陣を切り裂き、状況に応じてスルーパスとシュートを使い分けるところも似ている。これまで何人もの選手が「マラドーナ2世」と呼ばれてきたが、マラドーナの神域にここまで肉薄してきたのはメッシが初めてだろう。

人間性はかなり異なる。既成の権威や権力に公然と牙をむくマラドーナに対してメッシはどこまでも慎み深い。

2人の武器であるドリブルにしてもテイストは異なる。若かりしマラドーナと対戦経験がある某日本選手はそのドリブルを「ウシが向こうから突進してきた」と評した。あまりの回転の速さに脚が4本に見えたのか、真意は不明だが、とにかく生身の人間では止められないと感じたらしい。「ドリブルの間中、ボールが常に体の真下にあった」という証言もある。タックルしようにもボールが足から離れないので足を出すタイミングがまったくつかめなかったというのだ。

「右脚の粘りがすごかった

「右脚の粘りがすごかった」と喝破したのは自身も対戦経験がある日本が生んだ天才ドリブラー金田喜稔さんである。

「フェイントをかける際、右脚で立っている時間が人より長かった。だから相手が我慢しきれずに重心を移した後にその逆を取れた」

ボールを操作する左脚とともに、プレー全体を支える右脚の粘っこさに舌を巻いたわけである。

メッシは"短足"を逆手に

マラドーナが立ち脚の粘りなら、メッシは"短足"を逆手に取っているように私には見える。マラソンにたとえると、ストライド走法(歩幅の伸び)ではなくピッチ走法(脚の回転数)で走る典型というか。幼少のころからホルモンの分泌異常で体が小さく、リーチの短さや歩幅の狭さを回転数で補うことを余儀なくされたからだろう。その結果、普通の選手が1歩で行く距離を2歩かけて素早く移動するスタイルを身に付けた。

普通に考えるとこれは大変なハンディである。仮に2メートルの距離を1歩でいける選手がいるとしたらドリブルでボールに触る回数も1回ですむ。しかし、2メートルに2歩かかるメッシはボールに左、右(あるいは右、左)と2回触らないと同じ距離を進めない。メッシのドリブルのタッチ数が異様に多く見える理由でもある。

マタ抜きを簡単に

ただ、これはうまくすると2メートルに達する手前の任意の地点(2歩目)で自由に方向を変えられることも意味する。小刻みな分だけ方向を変えるポイントもたくさん作れるのだ。メッシは正面の相手だけでなく、並走する相手のマタの間を抜くことを簡単にやってのける。これも「せーの」で同時に右足を踏み出した場合、相手は踏み出した右足が次に着地するまでは何もできないが、脚の短い(回転数が速い)メッシは相手より先に右足が着くので左足でボールに触る機会を作れる。そのときに宙を跳んでいる相手のマタの間にボールを通すと相手は重力に逆らうこともできず、なすすべがないのである。

「超優等生」と「逆境の男」

現在、無敵に見えるメッシだが、正直なところ私はまだマラドーナと同じ俎上(そじょう)に載せて議論する気になれない。今のメッシは「順境の少年」という感じがするからだ。FCバルセロナではシャビやイニエスタといった最高のチームメートに恵まれ、フィニッシュという仕事に専念できる。カンプ・ノウという最高にボールが走るスタジアムで仲間と作り出す心地よいリズムの中で特長を発揮、自分をこよなく愛してくれるサポーターにも包まれている。

マラドーナが生きた時代に比べれば非道なタックルに厳罰が下るようにもなったのも追い風になった。グアルディオラという思慮深い監督の下でいろいろなポジションを与えられ芸の幅を広げてもいる。超名門校の超優等生という感じなのだ。

マラドーナは「逆境の男」である(自ら逆境を招き寄せている気もするが……)。イタリアのナポリ、86年のメキシコW杯など仲間に恵まれた時期もある。が、大抵は「戦術はマラドーナ」といわれるくらい仲間や監督から頼られ、実際それに応えてきた。90年のイタリアW杯などマラドーナの神通力にすがりながらチームはブラジル、旧ユーゴスラビア、イタリアを下して決勝までこぎ着けた。明らかな劣勢、明らかな負け試合を一人で支えて、ひっくり返す。マラドーナがこうした奇跡を起こす力は圧倒的である。

メッシにとってW杯はこれまでにない逆境

皮肉というか、面白いことにW杯南アフリカ大会に、アルゼンチンはそのマラドーナを監督にいただいて出場する。優等生メッシの前に突然担任として現れた、破天荒な中年OB。本国アルゼンチンでは、マラドーナが監督になってからメッシが力を発揮できないのは、自分を越える存在であろう後輩を先輩が潜在意識下で疎ましく思い、それがメッシにも伝わってギクシャクしているからという説もある。

私はそんなマラドーナの嫉妬(しっと)説にくみする気はない。ただ、南アフリカのW杯がメッシにとってこれまで経験したことのない逆境になる気はしている。それはマラドーナがメッシを最大限に評価しているからで、マラドーナが監督として先輩としてメッシに託すことは、メッシが考えている以上に大きい気がするからだ。メッシがこの試練をどう乗り越えるのか。マラドーナは21歳で出た82年スペインW杯ではほとんど何もできなかった。2人のあれこれを論じるのはもっと先で十分だろう。

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