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進むCO2の農業利用 温暖化の「悪玉」を有用資源に

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発電機の稼働で生まれる電気のほか、排熱も利用する「コージェネレーション(熱電併給)システム」が、エネルギーの利用効率が高い省エネ技術として広まりつつある。

加えて、排気に含まれる二酸化炭素(CO2)をも有効に使う「トリジェネレーションシステム」と呼ばれる仕組みも注目され始めた。トリジェネレーションには、CO2を作物の生育増進に利用する「農業トリジェネレーション」と、アルカリ廃液の中和に利用するなど、工業的に使う「工業トリジェネレーション」がある。世界的に利用が広がっているのが農業利用だ。

総合熱効率は90%超

米カリフォルニア州キャマリロにあるHouweling's Tomatoesは、125エーカー(約0.5平方キロメートル)もの温室で年間数百万個のトマトを生産している(図1)。同社は、非遺伝子組み換え作物に限定しているほか、地球環境の視点からも、持続可能な農業に取り組んでいることで知られている。5エーカー(約2万平方メートル)に太陽光パネルを敷き詰め、雨水タンクの水を循環利用するなど環境負荷を低減している。

加えて2012年8月、全米でも珍しい高効率の分散型エネルギーシステムを導入した。米GE(ゼネラル・エレクトリック)製の8.7MW(メガワット)のガスエンジンを設置(図2)。発電時の排熱を温水に変えて温室の加温に利用するとともに、作物の生育を促進するため、CO2濃度の高くなったガスエンジンの排気を温室に送り込むトリジェネレーションを構築した。

発電効率は45.5%で、排熱利用を含めたコージェネシステムの総合熱効率は90%を超える。温室に投入される排気中のCO2は、年間で2万1400tに達する。ガスエンジンは、地域の電力需要がピークに達する昼前後を中心に稼働しているので、負荷平準化に貢献することにもなる。

ハウスに投入されたCO2は日中、作物の光合成に利用され、生育の増進に寄与する。排気中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、その他の微量の有害物質は、触媒によって、地域の大気汚染管理基準を下回る値まで低減している。

CO2濃度を高めて収穫増

ガスエンジンの排気に含まれるCO2を農業に利用する試みは、米国では始まったばかりだが、欧州ではすでに導入例が多い。GEは温室栽培向けに全世界で800基以上のガスエンジンを納入しており、約2GW(ギガワット)の発電システムで排気を作物の生育増進に使っている。排気中のCO2利用を同社内で先導的に研究しているのが、オランダの研究所だ。温室栽培の盛んなオランダでは、自家発電やボイラーに含まれるCO2を早くから農業に利用してきた。

日本でも、大阪ガスや農業・食品産業技術総合研究機構花き研究所などが、農業トリジェネレーションの導入に取り組んできた。大気中のCO2濃度は、通常360PPM(1PPMは100万分の1)だが、同研究所の実験結果を見ると、CO2濃度を700~1000PPM程度に上げると、葉野菜で25~30%、果物で20%程度、花きでは40%程度の収穫増が認められている。

実際の畑での導入例としては、大阪ガスが茨城県つくば市と協力して、同市内の花き栽培農家でガスエンジンを使ったトリジェネレーションを構築した実績もある(図3)。営業ベースでも、トヨタ自動車系の花き生産・販売会社、トヨタフローリテック(青森県六ケ所村)が、マイクロガスタービンを使ったトリジェネレーションを導入、年間約400万鉢を生産している。

オランダで進むCO2の温室栽培利用

トリジェネレーションの発展形として、ここにきて注目されているのが、CCU(CO2の回収・利用)だ。CCUの場合、排気から積極的にCO2を分離し、高濃度のCO2を、農業や工業に利用する。

もともとはCCS(CO2の回収・貯留)として、火力発電所などの排気からCO2を分離・回収し、地下の帯水層に圧入して閉じ込めるプロジェクトが検討さてきたが、分離したCO2を経済価値の高い用途に使えないかとの発想が生まれ、CCUと呼ばれ始めた。CCSは排出量取引制度のなかで経済価値に換えるしかないが、CCUならば、排出量価格の変動に左右されずに、安定的な収益源になる可能性がある。

回収したCO2の利用法としては、これまでも油田やガス田に圧入して、回収を増資する試みがあったが、CCUはより積極的にCO2を原料などにすることを視野に入れている。

その先駆的な例がオランダに見られる。同国ではここ数年、精油所など化学工場の工程から排出されるCO2を温室栽培に活用する事業が軌道に乗っている。ロッテルダム近郊の工業地帯にある英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルの製油所では、2005年から精製工程から出るCO2をほぼ100%の濃度まで高め、ハーグ南部の園芸農家の温室に供給している(図4)。

地元ガス会社と建設会社の合弁会社であるOCAPが、シェルからCO2を購入して、パイプラインで農家にCO2を供給、販売している。2012年1月には、さらにロッテルダム近郊のバイオエタノール製造会社、AbengonaからのCO2供給施設も整備した。

工場でCO2を圧縮し、パイプラインで送る。搬送中に大気と混ぜて1%の濃度でハウスに投入する。温室内のCO2濃度は、平均して通常の約2倍(760PPM)になる。CO2の多い環境下で、野菜の成長は約25%増進するという。現在は、約500軒の農家(総温室面積約13km2)に、年間30万tものCO2を供給している。

CCUが注目され始めたのは、オランダのように工場と農家が連携できる可能性があるからだ。現在、CCSプロジェクトをにらんで排気からCO2を効率的に回収する技術の開発が進められている。将来的にCO2の回収コストが大幅に下がっていけば、ハウス農家向けのCO2提供サービスの事業性が高まる可能性がある。

CO2の工業利用も視野

その先を見据えた動きとして、CO2を化学原料として工業的に利用しようとする試みもある。すでに炭酸塩鉱物にCO2を蓄えて建設材料を製造したり、コンクリートにCO2を吸収させたりする取り組みがある。

また、CO2と水素(H2)を原料にメタノールを製造するプロセスが確立している。ただ、化学的に不活性なCO2を経済的に価値のある材料や燃料に変換するためには、エネルギーを投入する必要がある。このエネルギーに化石燃料を使った場合、CO2を排出するので温暖化対策にはならない。

CCUの究極的な目標は、再生可能エネルギーを使ってCO2を有用な材料や燃料に転換することだ。こうした研究分野で注目されているのが、藻や人工光合成を使った炭化水素などの製造だ。植物は光合成によって太陽光を使いCO2と水から炭素化合物を作り出す。

最近注目されているのは、光合成の結果、体内に炭化水素油を蓄える藻類だ。一方、人工光合成とは、金属触媒や金属錯体など量産可能なデバイスを反応場に、CO2と水を太陽エネルギーで炭化水素に変換する技術だ。

ここ数年、国内外でこうした研究が活発化している。日本でも藻の分野でベンチャーのユーグレナ、人工光合成ではパナソニックや豊田中央研究所などが画期的な成果を上げている。

CO2の用途が、作物生産の増進に加え、工業的な手法による炭化水素製造にも広がれば、CO2提供サービスの需要が爆発的に膨らむ。そうなると、太陽光や風力による電気と並んで、炭素循環を前提にした液体の炭化水素燃料が再生可能エネルギーの2次エネルギー(エネルギー媒体)になり、脱化石燃料時代のエネルギーシステムの選択肢が増えることになる。

トリジェネレーション、そしてCCUによるCO2の有効利用の先には、こうした次世代エネルギー社会を垣間見ることができる。

(日経BPクリーンテック研究所 金子憲治)

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