資生堂、社長に初の外部人材 ブランド再生託す
資生堂は24日、マーケティング統括顧問の魚谷雅彦氏(59)が2014年4月1日付で社長に就くと発表した。前田新造会長兼社長(66)は6月下旬の株主総会後に相談役に退く。140年超の歴史を持つ同社で、役員経験のない外部の人材が社長に就任するのは初めて。低迷が続く自社ブランドを再生するため、日本コカ・コーラ元社長で飲料のヒットなどで実績を残した魚谷氏の経験に託す。
前田氏は健康上の理由で退任した末川久幸前社長(54)の後を受けて、今年4月に社長を兼務。来年4月1日付で兼務を解き、代表権のある会長専任になる。
「まさかあの人が。顧問として助言をもらうだけだと思っていたのに」。同日午後4時。記者会見と同時に資生堂の社内サイトに人事が掲載されると、東京・汐留の本社ではあちこちから驚きの声が上がった。
前田氏は「ショートリリーフ」を公言しており、1年で交代するとの見方が多かった。社内で挙がっていた後任の有力候補は、国内の化粧品事業を担当する坂井透取締役執行役員常務(57)や海外事業を担当する岡沢雄取締役執行役員常務(56)。いずれも生え抜きだ。
魚谷氏は01年に日本コカ・コーラの社長に就任。06年から11年までは会長を務め、缶コーヒー「ジョージア」をヒットにつなげた。前田氏に手腕を期待され、13年4月に顧問に迎えられていた。
資生堂は08年のリーマン・ショック後、得意とする百貨店向けなどの高級化粧品が低迷。若い消費者が多いドラッグストアでは、花王やロート製薬などにシェアを奪われた。
魚谷氏は「エリクシール」「マキアージュ」「SHISEIDO」の主力3ブランドの刷新を任されていた。顧問でありながら販売子会社や専門店に足を運び、課題を把握するために現場の担当者の声に耳を傾けた。こうした仕事ぶりが次第に前田氏の好評価につながった。
「ぽっと入ってきた人に資生堂の文化が分かるのか」。後任人事の選定が本格化した今秋、前田氏は魚谷氏を社外取締役らで構成する「役員指名諮問委員会」に後継候補の一人に挙げたが、委員には否定的な意見もあった。
だが複数の候補にプレゼンテーションさせる中で、他の候補者に比べて「成長に向けたマーケティング戦略や熱意が明らかに違っていた」(前田氏)。最終的には委員会で全員一致をみた。
前田氏は社長兼務後、不採算のフランス子会社を最大のライバルであるフランスの化粧品メーカーのロレアルに売却する方向で協議を開始。今秋までに国内の小売店の店頭在庫を回収するなど、「負の遺産」の処理に努めてきた。
資生堂は国内の景気回復効果で14年3月期に4期ぶりの営業増益を見込む。次の課題は低下した自社ブランドの魅力を高め、国内の売り上げを積み上げること。魚谷氏は来秋、主力ブランドの商品や広告宣伝を全面的に見直して、回復基調を確かなものにする。