韓国大統領が謝罪 友人に内部文書、違法の恐れ
【ソウル=峯岸博】韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の演説草稿や閣議での発言などに関するファイルが、同氏の古くからの友人である崔順実(チェ・スンシル)氏(60)の手元に秘密裏に届けられ、朴氏が指南を受けていたことが分かった。朴氏は25日、「一定期間、一部の資料に対して意見を聞いたことがある」と述べた。機密性の高い内部文書の民間人への提供を認めたうえで「国民の皆さまに深くおわびする」と謝罪した。
韓国大統領府(青瓦台)で国民向けの談話を発表した。大統領演説の草稿が外部に流出したことは、大統領記録物管理法や刑法に違反する恐れがある。与野党から真相究明を求める声が強まっており、朴政権への大きな打撃となる。
疑惑は韓国のテレビ局JTBCが24日夜に伝えた。ドイツにいるとみられる崔氏がパソコンの処分を依頼した関係者からパソコンを入手し、データを分析した結果、2014年3月にドイツで北朝鮮政策のロードマップを示した演説の草稿など文書44件を発表前に受けとっていたと報じた。文書にはところどころ赤い文字で表示されていた。大統領の側近である秘書室長の13年8月の人事に触れた文書もある。
文書を提供されていた崔順実氏は、宗教家、故崔太敏(チェ・テミン)氏の五女。朴氏は1974年に実母が亡くなった直後に崔太敏氏と知り合い、同氏の死去後も崔順実氏との付き合いを続けてきた。崔順実氏に関しては「陰の実力者」(朝鮮日報)として、野党やメディアは、大統領府が財界に要求して多額の資金を出させた疑いのある2つの財団を私物化していたと追及している。
崔氏に関し、朴氏は談話で「困難な時に助けてくれた縁で、先の大統領選当時、演説や広報分野で国民にどう伝わるかについて意見や感想を伝えてもらった」と説明。大統領就任後もこうした関係を続けていたと報道を大筋認めた。「資料をより丁寧に準備しようという純粋な気持ちでやったことだ」とする一方で「大統領府の補佐体制が整備された後はやめた」と語った。
25日の韓国紙ハンギョレ(電子版)は崔氏の元側近のインタビューを掲載。それによると、青瓦台の首席秘書官らが朴氏に報告した関連資料がほぼ毎晩、崔氏の事務所に届けられたといい、「崔氏の指示で我々が(国政課題などの)事業計画書を作って送ると、それが後にそのまま青瓦台の文書になって我々に伝えられた」と語った。
最大野党「共に民主党」の報道官は「崔順実氏が朴政権の実質的な主役だと大統領が認めた」とし「わが党はあらゆる手段を総動員して真実を究明する」と強調した。与党セヌリ党の報道官は「真相究明と納得できる措置が必要だ」と述べた。