2011年8月8日10時15分
ハロウィーン向けにデザインされた、モンスターに変装したキティたち (C)1976, 2011 SANRIO CO.,LTD. |
37年前にサンリオが生み出した子猫のキャラクター「ハローキティ」が、海外の高級ブランド品に次々に使われている。衣服はもとより、宝飾品やテキスタイルにもなり、愛らしいイメージを裏切るドクロに変身した例も。日本を代表するキャラクターが、ブランドの創造力を刺激しているようだ。
7月10日までの11日間、東京の表参道ヒルズのホールをキティが占拠した。オーストリアのブランド「スワロフスキー」のハローキティ・コレクションのお披露目だった。
目玉は約2万個のクリスタルをちりばめた身長18センチのキティのオブジェ(115万5千円)。クリスタルをカットして作った顔形ペンダント、指輪、バッグなど約30点を、世界各国で販売する。
サンリオでは最近、欧州の高級ブランドとのコラボレーションが目立つ。
パリの「レオナール」もその一つ。大きな花柄のプリントワンピースが奥様層に人気のブランドだが、今春、キティ柄のパーカ(6万8250円)やTシャツ(3万1500円)を発売。次世代の客へアピールしたいという。
英「リバティ」社は昨年に続き今年も、キティの新柄を日本限定で販売。本社のヘッドデザイナーがキティのファンで、サンリオに持ちかけた。この布地は「サマンサタバサ」のバッグにもなった。
トレードマークのドクロの形がキティに似ているのを利用したのが、イタリアのスポーツウエアブランド「ハイドロゲン」。ひげとリボンをつけて、パーカ(2万7300円)とTシャツに。デザイナーのアルベルト・ブレーシは「ビジネスが日本で好調だし、日本の有名ブランドと世界的なコラボをしたいと思っていた。だから地球で最も有名な日本のキャラクター、キティに目をつけた」。
サンリオ広報課によれば、ドクロ、ヒョウ柄など不良っぽい変身は断っていた時代もある。今は価値観の変化に対応し、「ブランドの数だけアレンジがある」という姿勢。ただ、人を傷つけたり、喫煙したりする姿は許可しない。
キティは1996年ごろ、歌手の華原朋美がファンを公言し、中高生に広まった。その後マライア・キャリー、パリス・ヒルトン、レディー・ガガといったファッション・アイコンが続々とファンになったため、ファッションに敏感な人たちのアイドルというイメージが定着している。
サンリオ自身も新しいキティ像づくりに積極的だ。最近もハロウィーンに向けて、モンスターに変装したちょっとコワいキティを作った。
◆変身させやすく、いじるほど魅力
なぜキティは引く手あまたなのか。デザインジャーナリストで、全国の名産品などをかたどった「ご当地キティ」のコレクターでもある藤崎圭一郎・東京芸大准教授に聞いた。
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いじるほど魅力が引き立つキャラクターなんです。目、鼻、ひげという最低限の要素に、特徴のリボンが加わるため、この四つがそろえばキティに見える。
性格もイノセントで、変身させやすい。この点、正義の味方「アンパンマン」や、人格を持っていそうな風貌(ふうぼう)の「せんとくん」はいじりにくい。
サンリオのブランディングの姿勢も一因です。原形をかたくなに守るより、消費者と一緒に遊び続けることで、消費者との親密な関係性がつくれる。それを知っているのでしょう。(安部美香子)