UPDATE4: 米最高裁、医療保険改革法の国民の保険加入義務付けに事実上の合憲判断

 ◎国民の保険加入を義務付ける根幹部分を認める判断 
 ◎加入義務付けを認める判断は5対4、ロバーツ長官は支持 
 ◎オバマ大統領が米国民への勝利を宣言、ロムニー氏は撤廃に向け支援呼びかけ 
 ◎再選狙うオバマ大統領に追い風 
 [ワシントン 28日 ロイター] 米連邦最高裁は28日、医療保険改革法について、根幹部分である国民の保険加入を義務付ける条項を認める判決を下した。同法の成立を1期目の主要な成果と位置づけているオバマ大統領にとり、11月の再選挙に向けた大きな追い風となる。
 2010年に成立した同法の根幹部分は、大半の米国民に2014年までの保険加入を義務付け、加入しない場合には罰金を課すというもの。全米50州のうち26の州、および中小企業を代表する団体などが違憲訴訟を起こしていた。 
 ロバーツ最高裁長官は「医療保険を取得しない特定の国民に対して罰金を課すことは、合理的に税金として位置づけられる可能性がある」とし、「憲法はこうした税を認めていることから、これを禁じたり、それに関する分別や公正さについて意見を述べたりすることはわれわれの役割ではない」との見解を示した。
 最高裁の9人の判事のうち、ロバーツ長官を含む5人が支持、ケネディ判事ら4人が不支持だった。不支持とした4人は、医療保険改革法全体が違憲と判断した。
 ただ、州政府に対してメディケイド(低所得者向け公的医療保険)の対象を著しく拡大するよう義務付けた条項については、憲法が定める権限を議会は超えたとし無効と判断した。これはオバマ政権にとっては痛手となる。
 ただ最高裁は、対象拡大の義務を果たさなかったことを理由に、政府がこの条項を根拠に拠出済みのメディケイド向け資金を州政府から引き揚げることを不可能にすれば、問題は解決するとの判断を下した。
 ロバーツ長官は、各州政府は「メディケイドの本質が基本から変わったということを認める必要がある。さもなければメディケイド資金をすべて失うことになる」とした。
 米共和党のベイナー下院議長は最高裁の判決を受け直ちに声明を発表。「今回の判決により、この有害な法律を完全に撤廃することの緊急性が強調された」とし、医療保険改革法の撤廃に向けた決意をあらためて示した。
 共和党が過半数を握る下院は同法の撤廃を承認する公算が大きいが、オバマ大統領率いる民主党が過半数を握る上院で確実に否決される見通し。
 最高裁は今年3月、医療保険改革法の違憲訴訟をめぐり3日間にわたり審理を行っていた。
 オバマ大統領とロムニー共和党大統領候補は見解を発表。大統領は最高裁の判断は米国民への勝利とし、同法施行に向けた取り組みを続けると同時に、改善に向け尽力していくと言明した。
 大統領は「米国には2年前の政治的闘争を再開させることも、元の状態に戻る余裕もない。この日の発表をもって、われわれは前進していく」と語った。
 ロムニー氏はマサチューセッツ州知事時代に同様の改革を実施したが、大統領の医療保険改革法には反対。同法撤廃のためオバマ大統領の再選阻止に向けた支援を呼びかけた。
 「米国民に選択の時が訪れた。『オバマケア(医療保険改革法)』を撤廃するには、オバマ大統領を交代させなければならない」とし、「私の役目はこれを実現することだ」と述べた。
 また「最高裁はオバマケアが違憲ではないと判断しただけだ。良い法律や政策だとは言っていない」と主張した。
 今回の最高裁の判断は同法の正当性を概ね認めるもの。ロバーツ長官が支持に回ったことがカギとなった。
 反対派は、保険加入の義務付けは議会による権限の逸脱と主張していた。最高裁でもこの点で見解が分かれたが、議会には課税の権限が認められているとの観点から支持が多数となった。
 共和党のカンター下院院内総務は、下院では7月11日に同法撤回のための法案の採決が行われることを明らかにしている。
 最高裁の判決を受け、株式市場ではテネット・ヘルスケアなどの病院経営企業の株価が上昇。保険会社株はまちまちで、医療保険大手のエトナやウェルポイントは下落したものの、メディケイドを専門とするアメリグループやモリーナ・ヘルスケアなどは上昇した。
 *医療保険改革法に関する世論調査結果
  link.reuters.com/vaw98s
 *米インフレと医療費の推移
  link.reuters.com/raw98s

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