政府は2009年12月16日、2010年度の科学技術予算における国策の次世代スーパーコンピュータ開発事業について、227億円の予算を計上することを決めた。当初の概算要求額に比べて40億円の減額だが、一時は政府判断で凍結することも検討された国策スパコンだが、若干の改善を伴って開発は続行されることとなった。世界最速機を目指す目標は、「世界最速レベル」に改めて、世界一にこだわらない方針を示した。

 減額分は主にシステム開発費。文科省は内々で国際競争を見据えて2011年度中に1秒間に1京回(10ペタFLOPS)の計算ができるスパコン「京速計算機」を開発して、世界一を目指す予定だった。しかし、システム開発費の減額を受けて、2012年度に同機を開発する当初計画通りとした。

 財務省との閣僚折衝後、川端達夫文部科学大臣は、米国が2011年度中に世界一のスパコンを開発する可能性もあることを考慮し、「世界最高性能で最速レベルを目指す」と発言した。

 開発者よりも利用者の利便性を重視する見直しを行い、全国のスパコンをネットワーク化する計画を新たに加えた。来年から専門家の意見を募り、計画を固めて、再来年度の概算要求に盛り込む方針だ。

 文科省の関係者は「凍結という最悪の事態は免れて安心している。人材育成を含めたアプリケーション開発関連の当初計画は、計画通りに続行か見直しが必要かは今後詰める」としている。

 国策スパコンは11月から12月にかけて、政府の行政刷新会議による事業仕分けで事実上の凍結判定をされたものの、研究者たちの猛反発を受け、政府の総合科学技術会議で「改善を行いつつ推進」と迷走していた。