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文/中川右介
日本ではきわめて異質な選挙
東京都知事選挙が始まった。
候補者が決まるまで、与野党とも「迷走」し、ドタバタとしたと報じられているが、出された結論は、それぞれの陣営にとって「勝利の法則」にしたがったものとなった。
東京都が抱える問題とか、どういう人が知事にふさわしいかといったテーマは、専門の方に任せ、「文化人はどう選挙に関わってきたか」という観点から、戦後の都知事選挙の歴史を記してみたい。
一般に、日本では芸術家・文化人が政治に直接関与することは少ない。芸術・文化に関わる者のなかに、自分たちは高尚な人間なので政治のような下賤な俗世界とは関わらないのである、という意識が潜在的にあるからだ。
私はかれこれ30年も出版の世界にいて、大学教授や作家、音楽家など多くの芸術家・文化人と接してきたが、「新聞など読みません。テレビも見ません」と気取って言う芸術家・文化人を何人も知っている。
「インテリ」がそういう態度だから、日本の政治はますます俗っぽくなっていくのではないかと思うのだが、それを論じても仕方がない。
このように、文化人は政治にコミットしないという風潮があるなか、東京都知事選挙は、文化人が挑む場となってきた。日本の政治風土のなかで、きわめて異質な選挙なのだ。