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「ITIL V3ではサービスライフサイクルを重視」-CAストラウド氏


米CAのITSM&IT Governanceエバンジェリスト、ロバート・ストラウド氏
 日本CA株式会社は6月29日、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)の新版であるITIL Version3(以下、V3)に関する説明会を開催。米CAのITSM&IT Governanceエバンジェリスト、ロバート・ストラウド氏が解説を行った。

 ITILとは、ITサービス管理におけるベストプラクティスをまとめたもので、英国の中央コンピュータ・電気通信局(現・商務省)が中心となって作り上げた。現行のITIL Version2(以下、V2)は2000年から2001年にかけて改訂されたが、ストラウド氏は「過去、ITは自動化や情報管理のために使われてきたが、その意味合いがビジネスの中で変わってきた。今はITが関与していないプロセスは皆無に等しく、今までのようなITとビジネスを合致させる、すりあわせるというだけでは不十分で、ITをビジネスの中に統合していかねばならない時代がやってきた」と指摘。「V2はプロセス指向型ということでは重要な一歩を担っていたが、V3ではそれを一歩進め、ライフサイクルとしてのアプローチを取った」と説明する。

 5月30日に改版されたそのV3では、V2と書籍の構成が変更され、「Service Strategies」「Service Design」「Service Transition」「Service Operation」「Continual Service Improvement」の5冊が同時にリリースされた。ストラウド氏によれば、「V2の『Service Support』にあたる部分では、本の中でのくくりが異なったり、サポートされている領域が違ったり、より使いやすいように指針を提供していたりするが、V2の中にあるものはすべてV3の中でサポートされている。また『Service Delivery』もフルにV3でサポートされているが、ITサービスを組み立てるということにおいて、初期の段階から対応できるようになった」とのことで、基本的にV2の要素はV3で網羅されているという。

 「V3ではベストプラクティスが一番大きな土台になっていると同時に、組織を次のレベルへ底上げをする、飛躍させることができるものだ。V2を実践している人に調査をしたところ、ガイドラインにまで詳細に落とし込んだものが欲しいという声があった。コアとなる(5冊の)書籍の中では、ライフサイクルのステップごとにより詳細な記述、規範的な記述がなされており、短期間で生産性を上げられるようにしている。すでにV2を導入する道のりの半ばにいるのであればそれをやめる必要はない。V3への移行手法・機会は段階ごとに与えられている」(ストラウド氏)。


ITIL V2のService SupportにおけるV3へのマッピング

ITIL V2のService DeliveryにおけるV3へのマッピング
 コアとなる書籍個々を見ると、まずService Strategiesは「事業上の戦略を理解し、その中でITをどう活用するかというくくりでまとめられたもの」(ストラウド氏)。組織の中の戦略が何であるのかを洗い出して、施策をどう立案するのか、その立案が事業にどう影響を及ぼすか、ということについてまとめられている。

 Service Designは、最終的に提供するサービスをデザインしていく、設計の分野について記述されている。次段階のService Transitionでは、変更管理、リリース管理、構成管理の3つをカバー。Service Operationは、いかにサービスを実展開していくかという部分に焦点を当てたもの。イベント管理、インシデント管理、リクエストフルフィルメント、問題管理、アクセス管理などが含まれる。

 最後のContinual Service Improvementでは、継続的な改善への取り組みを規定している。ストラウド氏は、この章が独立した書籍になっている経緯について、「V2での一貫した考え方では、PDCAのサイクルを回すことがあったが、実際問題としてはService SupportとService Deliveryの2冊しか利用されないことが多く、現在がどういうレベルなのか、目的に達するまではあとどのくらいか、ということを知りたいという声が多かった」と説明。継続的なサービス改善に向けられたこの本において、ガイドラインを提供し、目標に到達するための流れを導くとした。

 「V3はITサービス管理の現在・未来のベストプラクティスの成果であり、最終的にはITとビジネスを統合する基盤となるものだが、CAとしては、ITILがやっと当社の技術レベルに追いついてきたと考えている。V3の中ではサービスが1つの大きなくくりとなり、すべてのサービス側面を識別していくのに、ユニファイドサービスモデルという手法を行っている。CAはそれを支援するためのソリューションスタックに注力し、顧客が独自事業の根幹を見据えてそこに集中していけるようにサポートしていく。最終的な結果としてもたらせるのは、真の意味でのビジネスとITとの統合であり、事業上の課題をとらえ、ダイナミックな形でのソリューションを提供することで、より良い成果をもたらせるだろう」(ストラウド氏)。



URL
  日本CA株式会社
  http://www.ca.com/jp/


( 石井 一志 )
2007/06/29 15:20

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