2015年6月8日号目次
INDEX
PROLOGUE
満額回答に 隠された真意
富士山麗に広がる山梨県忍野村。山中湖から北に3kmほど車を走らせると、ファナックの本拠地が見えてくる。黄色の建屋が林立し、周りを鉄製の柵が囲う。通りには黄一色のトラックや社用車が行き交う。異様な光景だ。
PART 1
「異様」なのには ワケがある
富士の裾野で作られた「黄色いロボット」が世界の工場を席巻している。奇異に見えるビジネスモデルが、孤高の製造業を支える。見た目にひるんではいけない。先入観を捨て、その正体に迫ってみよう。
PART 2
カリスマを継ぐ「雑用係」の意地
異様であるがゆえに強い、ファナック。この礎は、実質的な創業者の稲葉清右衛門によって築かれた。だが近年、深い森の中で、ある危機が進行していた。
PART 3
創業者がいなくても勝ち続ける
新しい考え方で経営に取り組まないといけません。内部留保についても、必要以上の規模になれば、どう活用するかは当然、株主から問われる。(稲葉清右衛門・名誉会長が率いていた)昔の体制ではそれを意識しておらず、企業価値を上げることに集中していました。
PROLOGUE
有訓無訓
旧山之内製薬と旧藤沢薬品工業が合併してアステラス製薬が誕生して、この4月に10周年を迎えました。私が手にしているのは、合併のアドバイザーを務めた会社から贈られた、「ツームストーン」と呼ばれる記念品です。
編集長の視点
地道にモノ作りに徹してきた強さ
今週号の特集はファナックを取り上げました。製造業を支える製造業。典型的なB to B(法人向けビジネス)で、一般の人にはなじみが薄い企業が今、なぜ株式市場で脚光を浴びているのか、読者の皆さんはよくご存じだと思います。
7 QUESTIONS
孫正義を10秒で納得させる資料とは
報告書や企画書、提案書など、ビジネスパーソンにとって資料作りは悩みの種。経営者を納得させる資料を作る方法を、ソフトバンクの孫正義社長の「カバン持ち」を務めた人物に聞いた。
時事深層
INSIDE STORY
スポンサー2社、それでも笑顔
民事再生手続き中のスカイマークが、再生計画案を提出した。この直前、大口債権者が相次ぎ再生計画案に反対の意向を表明。だがスカイマークを支援するスポンサーに悲壮感はあまりない。なぜか。
INDUSTRY
「サッカー」というマネーゲーム
国際サッカー連盟(FIFA)の汚職問題で、サッカー業界に激震が走っている。幹部ら14人を起訴した米司法省は「これは始まり」と語り、疑惑の深部にさらに切り込む構えだ。問題が広がれば、サッカーを利用してブランド力を高めてきたグローバル企業にも影響が及ぶ。
連続増配企業(2)
学習塾をFC展開、強い増配意欲
少子化の荒波が押し寄せる学習塾業界の中で抜きんでた利益率を誇る明光ネットワークジャパン。個別指導が売り物の「明光義塾」は全国で2100教室を超え、うち8割をフランチャイズが占める。手元資金だけで10年分の配当原資を蓄えるほど内部留保が厚く、今後も増配に意欲的だ。
INDUSTRY
無人運転、日本逆襲の切り札
ベンチャー企業のZMPが、世界初となる無人運転車の実用化を目指している。政府に規制緩和を働きかけ、自動運転分野で先行する米グーグルに挑戦状を叩きつける。これまでの遅れを一気に挽回し、日本勢が世界標準を握る日が来るかもしれない。
MARKET
再生ファンド撤収、日本株に天井感
企業再生を手掛ける外資系ファンドが投資先の株式売却に動き始めた。米サーベラスは西武ホールディングス株を売却する方針で、日本市場から事実上、撤収する。投資妙味のある企業の減少に加え、日本株に天井感が出ているとの見立てが背景にある。
COMPANY
「都営銀行」売却、焦点は企業価値
東京都が出資する新銀行東京が東京を地盤とする地方銀行グループと経営統合交渉に入った。かつて経営難に陥った「都営銀行」が実施した増資には「税金の無駄遣い」との批判が出た。金額にして400億円。統合の際の企業価値算定でこれを上回るかが今後の焦点だ。
SPECIAL REPORT
シリーズ 変わる東京:FILE.新宿
東西交流でよみがえる 日本最大のターミナル
東に日本を代表する商業圏を持ち、西に「副都心」というビジネス街を形成する新宿だが、多数の路線が乗り入れる駅の構造は複雑で、人の流れは線路をはさみ東西で分断されている。再開発で人の流れを円滑にして、遅れていた駅南側の開発も急速に進む。
超高齢社会の課題に挑む
「健康寿命」を延ばせ! ロボットが強い味方に
健康なまま長生きする──。超高齢社会に突入した日本にとって最大の課題の一つだ。有力な解決策と期待されるのがロボット。運動と会話をサポートして、介護状態を予防する。将来の巨大市場を狙って、大企業とベンチャーが入り乱れた開発競争が始まっている。
企業
シリーズ検証
電力小売り、乱戦の狼煙(1)
「ソフトバンクグループは携帯電話や通信回線だけでなく、それ以外のコンテンツを売るのも得意です」。今年3月下旬、東京・汐留にあるソフトバンク本社。訪問した東京電力常務執行役の山崎剛と執行役の西山圭太を相手に、ソフトバンクの電力小売り子会社、SBパワー社長の馬場一はそう語った。
フロントランナー 小なれど新
外国人観光客にスシはいらない
外国人観光客を日本に呼び込みツアーを企画する専門業者。“日本らしさ”の固定観念を捨てて日本を売り込み、訪日観光客2000万人を担う台風の目に。
加賀屋 小田 禎彦の経営教室
攻めの設備投資が停滞を打ち破る
旅館の設備は、客室係の労働効率を高め、サービスを際立たせる舞台。コストを惜しまない積極的な投資は、旅館の話題作りにもつながる。今回は、その設備投資について独特の考え方や工夫を説き明かす。
未来テック
小さな藻が航空機を飛ばす日
微細藻類から取り出した油で、バイオ燃料を作る研究が進んでいる。枯渇せず、二酸化炭素削減や食料需給の改善など、メリットも多い。安定大量培養という課題を克服し、2020年の実用化を目指す。
PEOPLE
編集長インタビュー
上釜 健宏 氏[TDK社長]
250億円を投じ、秋田県で電子部品工場の新棟を建設する。提唱するのは「インダストリー4.5」。品質を重視した一貫生産にかじを切る。業績が好調な今だからこそ、原点回帰に挑む。
敗軍の将、兵を語る
古都の足、淘汰に沈む
1938年創業の老舗タクシーが、京都地裁に民事再生法の適用を申請した。滞納していた社会保険料を納付できる見通しが立たず、自主再建を断念した。負債総額は約10億2000万円。乗務員の雇用を維持しつつ、再建を目指す。
新社長の独白
越智 仁[三菱ケミカルホールディングス社長]
入社当初、大きなトラブルを経験しました。肥料や合成繊維の原料となるアンモニア生産設備は扱いが難しいことで有名。担当した、アンモニア合成ガスから二酸化炭素を除去する設備が止まったことがあったんです。
連載
CULTURE
世界鳥瞰
The World This Week
就任1年のモディ政権、改革に壁
インド政府は5月29日、2015年1~3月期のGDP(国内総生産)成長率を前年同期比7.5%と発表した。ナレンドラ・モディ政権は、この値は中国の同期の成長率7.0%を上回るもので、政権発足以来1年にわたって続けてきたモディノミクスの成果だと胸を張る。
[FINANCIAL TIMES]
FIFA汚職、満を持して米が摘発
米捜査当局が5月27日、スイス当局と連携し、国際サッカー連盟(FIFA)の汚職摘発に踏み切った。捜査は5年前から密かに進められ、ワールドカップ開催地決定などにからむ贈収賄の容疑は濃厚だ。ブラッター会長は選挙で5選を果たした(だたし、6月2日に辞任を表明した)が、捜査の手は最終的に会長本人にも及ぶかもしれない。
[The Economist]
ハイテク好き中国人が先端に?
5月25~27日に中国・上海で、米国外で初の国際家電見本市CESが開催された。相変わらず模倣品も多いが、中国発の新製品も登場しており、世界的ヒットとなり得る革新的なものも少なくない。中国は市場規模だけでなく、ハイテク好きの国民性も寄与し、今後世界をリードする市場になるかもしれない。