10月8日の深夜、掘削工事中だった新北陸トンネル・葉原(はばら)工区(4・495キロ)の福井駅方向側が貫通した。
北陸新幹線は金沢(石川県)から敦賀(福井県)への延伸工事が急ピッチで進んでいるが、その難関が南越前町と敦賀市間の鉢伏山だ。標高は762メートルにすぎないが、福井県はこの山を境に西が若狭地方、東が越前地方と異なる行政文化圏が形成されてきたほどの境界だ。この山の下にはJR北陸本線の北陸トンネルがあり、通過には特急列車でも7-10分かかる。このトンネルに並行して全長19・76キロの新北陸トンネルが掘削中なのだ。
掘削は6工区にわけて同時並行で進められているが、葉原工区が2015年1月の工事開始から4年10カ月目に大桐(おおぎり)工区(3・605キロ)とつながったのだ。工事の発注者元は鉄道・運輸機構だが、現場の工事担当は鹿島、りんかい日産、石黒、高崎からなるJV(特定建設工事共同企業体)だ。
今年の7月、取材でその葉原工区の現場を見ていただけに、私はぜひ貫通の瞬間に立ち合いたいと、貫通予定日時に合わせて東京を出る準備をしていたが、先月8日の早朝、葉原工事事務所長の田中久人さん(鹿島)から、「貫通してしまいました」という知らせが届いた。送られてきた写真を見てびっくり。貫通穴はハート形をしていたのだ。土質が柔らかい地層が出てきたため、安全策として鋼管を数本打ち込み用心深く掘り進めていたが、思いがけず2本の鋼管部分に沿って厚さ4メートル分の土砂が崩れ穴があいてしまったのだ。