特集 松井秀喜

第二次長嶋政権の中心選手へ

 ドラフト前、「あこがれは阪神。小さいころからののファン」と言っていた。巨人、中日、ダイエーも加え、それ以外の球団の指名なら「駒大進学」もほのめかしていた。実際、希望通りの4球団から指名を受けたが、交渉権を得たのは阪神ではなく巨人。長嶋茂雄監督が引き当てた。松井は一瞬複雑な表情を浮かべたものの、すぐに入団OKのコメント。高校通算60本塁打の超高校級スラッガーが、プロの階段の第一歩を踏み出した。

 人と人の出会いは面白いものだ。巨人を離れた後、長い浪人生活を送っていた長嶋氏は、この年に13年ぶりの監督復帰を決めたばかり。初仕事がこのドラフトだった。松井が甲子園大会で放った本塁打を見て、その素質にほれ込んでいた。1位入札を伊藤智仁(三菱自動車京都)から変更させ、獲得。この後、第二次長嶋政権の、監督、中心選手として苦楽をともにすることになる。

 長嶋監督は松井の素振りを欠かさず見た。球場でも遠征先でも毎日、毎晩。スイングの音まで入念にチェックした。「本当に厳しい人で、褒められたことはない。でも、人生の中で最も影響のある、大きな存在だった」と松井は言う。2001年、初めて首位打者を獲得したのを見届けるようにして長嶋監督が勇退。翌年、松井も日本を離れた。

 09年4月、日米通算で長嶋氏の444本塁打を抜いた時、松井は真っ先に国際電話で報告している。「僕が活躍するのが一番うれしいだろうし、恩返しにもなると思う」。師への感謝の思いは、今も昔も変わらない。

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