東京地裁に入る元法相の衆院議員河井克行被告=23日午前

 2019年7月の参院選広島選挙区の大規模買収事件で、地方議員や後援会員ら100人に現金を渡したとして公選法違反罪に問われた元法相の河井克行被告(58)=衆院広島3区=の第47回公判が23日、東京地裁であり、被告人質問が始まった。克行被告はこれまでの全面的な無罪主張を一転させ、起訴内容の大半について買収の目的を認めた。衆院議員を辞職する考えも明らかにした。辞職の時期には言及しなかった。

 弁護側の質問に答える形で説明した。地方議員らに現金を渡した趣旨については、自民党が2議席独占を狙って現職に加えて妻の案里元参院議員(47)=同罪で懲役1年4月、執行猶予5年が確定=を擁立した点に言及。「案里の当選を得たい気持ちが全くなかったとはいえない。全般的に選挙買収罪の事実であることは争わない」と述べた。

 認否を変えた理由に関しては、現金を渡した後援会員らが「被買収者」として法廷で証言をする姿を見て自省したとし「逃げることなく認めるべきは認めることが、長年にわたりお支えいただいた後援会、支援者に対する私なりの政治家としての責任の取り方だと考えた」と説明した。

 起訴状では100人に現金を渡したとされた。うち90人に関し克行被告は「選挙買収の目的のみではないが、事実として認める」と表明。残る10人は陣営スタッフと広島県議らで、「買収には当たらない」などと争う姿勢を示した。克行被告が選挙運動全般を仕切る「総括主宰者」とされる点も弁護側が「争わない」とした。案里氏との共謀は引き続き否定した。

 被買収者とされる100人のうち、40人が県議や市町議などの県内の政治家。このうち37人について克行被告はこの日、買収目的を認めた。一方で、案里氏が現金を渡した県議2人と選挙区内の県議1人の計3人については関与や買収の目的を否定した。

 これまでの公判で、この100人は検察側の証人として証言するなどし、うち94人が克行被告らの買収の意図を感じたと認め、6人が買収の意図を感じなかったなどと説明した。この6人のうち5人について、克行被告は今回、買収目的を認めた。

 克行被告は辞職の理由について「民主主義の根幹である選挙の信頼を損なう行為をし、国政や自民党に不信をかき立てることになった。全ての責任は私のみにある」と語った。被告人質問は8日間を予定。今後は弁護側が24、26、29、31日と4月5日、検察側は同6、8日に質問する。

 東京地裁は1月、案里氏が克行被告と共謀して県議4人に計160万円を渡したと認定し、有罪判決が確定している。案里氏は2月に議員辞職し、当選無効に伴う参院広島選挙区の再選挙は4月8日に告示、25日に投開票される。

 【解説】情状酌量狙う意図か