拉致被害者、蓮池薫さん講演会「命以外すべて奪われた」「北に見返り必要ない」 南あわじ市議会議員公開研修会

北朝鮮による拉致について講演する蓮池薫氏=南あわじ市市三條
北朝鮮による拉致について講演する蓮池薫氏=南あわじ市市三條

南あわじ市議会議員公開研修会として23日、同市市三條の市中央公民館で北朝鮮による拉致被害者で現在は新潟産業大准教授の蓮池薫氏(58)が「拉致問題の本質と解決への道~拉致問題にみる地方公共団体の責務~」と題して講演を行った。市議や市職員、一般参加者ら約500人が拉致の実態や帰国までの経緯などに聞き入った。

蓮池さんは昭和53年7月、新潟県柏崎市で北朝鮮工作員らに拉致され、平成14年10月に帰国するまでの24年間、北朝鮮での生活を余儀なくされた。帰省時に浜辺でデート中に数人の男に殴られて袋に詰められて運ばれた場面を生々しく振り返り、「人生の夢、家族の絆、命以外のすべてを奪われた」と語った。

世界各国から若者が集められており、北朝鮮の当初の目的は工作員に仕立てることだったという。だが、レバノン人女性が海外に出た際に大使館に駆け込んだため、語学指導を担当させられた。さらに大韓航空機爆破事件で拉致被害者が日本語教師をしていたと報じられた後は、翻訳の仕事を命じられていた。

ソ連の崩壊や金日成死後に大規模な飢饉(ききん)があり、経済的に追い込まれた北朝鮮は、日本との関係修復を狙って蓮池さんらの存在を認めた。その際もボートで海に出て漂流中に北朝鮮の船に救助されたという、うそのシナリオを覚えさせられた。小泉首相の訪朝で帰国した際には、北朝鮮に残った子供のことを考えて戻るつもりだった。だが、故郷柏崎で友人に会って日本に残ることを決意。「北は経済援助を焦っていたので、われわれが粘れば子供を返すはず」と考え、1年半耐えて子供を取り戻した。

現在も帰国できていない拉致被害者について「北朝鮮は調査すると言うが、どこに誰が暮らしているかはすべて把握しているので必要ない」と指摘。政府に対して「核やミサイル問題もあるが、同一にせず拉致を最優先にして解決してもらいたい。日本の関心が薄れたと思ったら何をするか分からない。必死に返せ、と言い続けること」と話す。北朝鮮の望む経済支援について「犯罪者に何の見返りか、というのは正論だが、食糧支援など核やミサイルに使われない形での見返りも必要になる」と被害者帰国に向けた交渉に期待を寄せた。

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