MONSTERZ モンスターズ:藤原竜也と山田孝之に聞く 目で人を操る設定「常識で考える必要ない」

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 藤原竜也さんと山田孝之さんという抜群の演技力を持つ2人がダブル主演した映画「MONSTERZ モンスターズ」が、5月30日から全国で公開された。これまで数々の作品に出演してきながら共演は初めてという2人。互いについて「山田くんが、絶対的な強さを持つキャラクターを作り上げていく姿は本当にカッコよかった」(藤原さん)、「竜也くんは、普段は冷静なのに本番になった瞬間にすごい爆発を起こせる人」(山田さん)と評し合う2人に話を聞いた。

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 映画「MONSTERZ モンスターズ」は、その“目力”で、すべての人間を思い通りに操ることができる藤原さん演じる“男”と、その“男”が唯一操ることができない、山田さん演じる田中終一が、壮絶な戦いを繰り広げるサスペンスアクションだ。なかなかあり得ない設定ではあるが、「常識で考える必要はなく、エンターテインメントとして見てもらえばいいと思う。それこそ、緊張している場面でも、『いやいやそれは……』と笑ってもらっていい。むしろ、観客の方々には、実際だったらどうだとか、リアリティーうんぬんととらえてほしくないですね」と山田さんは率直な意見を口にする。

 山田さんが演じる田中終一は、驚異的な治癒力と強靭(きょうじん)な肉体を持ち、藤原さん演じる“男”が、唯一操れない人間だ。山田さんは、終一という人物を「自分でも人とは違うという自覚はある。でもそれを特殊な能力ととらえていないし、それを隠すために世の中に溶け込もうと生きている」と説明する。そのため映画の前半では、しゃべり方や居住まいを「どこにでもいる若者のようにナチュラルに演じる」ことを、また後半では、前半とのつながりを含め、徐々に能力を発揮していく過程を「いかに自然に演じるか」に腐心したという。

 一方、“男”を演じた藤原さんは台本を読んだときの印象を「“目”で見たすべてのものを操り、自分の世界を作り上げるという発想は非常に面白いと思った」と振り返る。その中で時には台本の内容にも積極的にアイデアを出し、山田さんや監督と話し合い、「せりふを足したり、ニュアンスを微妙に変えてもらったりしながら、みんなが納得する台本にしていった」ことを明かした。

 メガホンをとったのは、「リング」(1998年)などの作品で知られ、米ハリウッドでのジャパニーズホラーブームを築いた中田秀夫監督。山田さんが「難しく考えずに笑ってくれればいい」と話すように、今作には、解釈の分かれる場面がちらほら見受けられる。例えばそれは、周囲の人々が“男”の力によって動けない中、彼一人が自由に動き回り、カップルの食べかけのタコヤキをパクリと口に入れるシーン。それは台本に書かれてある通りで、取材に立ち会ったスタッフいわく、「彼だけの世界の中で、一人好きなように生きていることを表現する」という意図があったようだが、演じた藤原さん本人は、「なぜタコヤキを食べるのか、実はよく分かっていなかった(笑い)」と打ち明ける。すると、横で聞いていた山田さんは「あそこのシーンで観客のみなさんにも、『なるほど、そういうことをする映画なんだ』ととってもらえればいいんじゃないかな」と助け舟を出していた。

 また、“男”は、大友克洋さんのマンガ「AKIRA」を愛読書としているが、それについて藤原さんが、次のような話も披露した。藤原さんは中田監督から「これがないと不安で仕方がない。この本だけがあれば自分はやっていける、この本の存在が支えだと思ってください」とマンガを渡されたという。藤原さんは、ひとまず役作りのために「AKIRA」を熟読し、「幼いころに母親から受け取り、常に孤独を感じながら読んでいた本がそれだった。いつか(『AKIRA』の主人公)鉄雄のように強くなり、母親に暴力を振るう父親を攻撃したい、そういう思いがあっての『AKIRA』だ」という思いに至り演技したという。すると、再び山田さんが「考えてみたら、あの状況で息子に『AKIRA』を渡す母親ってすごいよね(笑い)」とコメントし、藤原さんをフォローしていた。

 藤原さんは撮影中、右目、左目、両目と目ばかり撮られ、「こんなに(目の映像は)いりますか?」と中田監督にたずねたほどだというが、目力によって人を操ることを、演技とはいえ「楽しかったですよ」と話す。そして、「ただ……」と言葉をつなぎ、「スタッフさんが大変ですよね。エキストラの方とか俳優みんなに笛を吹いて、ここで一瞬止まってくださいとか動いてくださいと指示するわけです。僕は、準備が整ったら出て行って、ぱっと目を開けばいいわけですから(笑い)」と語り、スタッフやエキストラを労った。

 一方、車にはねられたり、上から落ちてきた花壇(コンテナ)の下敷きになったりと、かなり痛い描写が多かった山田さんは、「もちろん大変でしたよ。けがをしないようにみんなが集中してやらなければいけませんでしたから。花壇は、それは痛かったですよ。(重さは)400キロぐらいありましたから。(高架橋から山田さんが)落ちるのはさすがに危ないからスタントの方にお願いしましたが、花壇ぐらいだったら僕でも大丈夫」と真顔で語り、それを聞いていた藤原さんから、「おかしいでしょ。(下敷きになったら)死にますよ」と突っ込まれると、「マジでできるわけないでしょう」と笑顔で切り返していた。

 最後に、人を操ることができる力と驚異的な治癒力。欲しいのはどちらかと2人にたずねてみた。すると藤原さんは「それはもう、驚異的な治癒力でしょう。普通に生きて、けがをしたときは早く治して健康第一で暮らします」と話した。山田さんは「俳優業を続けていくんだったら終一が持つ力ですね。アクションもむちゃできますから。でも、普通に人として生きるんだったら“男”の力のほうが絶対楽しいでしょうね。いろんないたずらができるので」と答え、互いの言葉にうなずき合っていた。映画は5月30日から全国で公開中。

 <藤原竜也さんのプロフィル>

 1982年生まれ、埼玉県出身。97年、蜷川幸雄さん演出の舞台「身毒丸」のロンドン公演でデビュー。以来、舞台を中心に国内外で活躍。2000年「バトル・ロワイアル」で映画初主演。おもな出演作に「DEATH NOTE デスノート」シリーズ(06年)、「カイジ」シリーズ(09、11年)、「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」(10年)、「藁の楯 わらのたて」(13年)、「神様のカルテ2」「サンブンノイチ」(ともに14年)がある。「るろうに剣心」の「京都大火編」「伝説の最期編」の公開を今年の8月と9月に控える。

 <山田孝之さんのプロフィル>

 1983年生まれ、鹿児島県出身。テレビドラマ「ウォーターボーイズ」(2003年)などで注目され、映画「電車男」(05年)に主演。おもな出演作に「手紙」(06年)、「クローズZERO」(07年)、「鴨川ホルモー」(09年)、「十三人の刺客」(10年)、「GANTZ」(11年)、「悪の教典」「荒川アンダーザブリッジTHE MOVIE」「ミロクローゼ」「その夜の侍」(いずれも12年)、「凶悪」(13年)、「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」(14年)などがある。前作に引き続き主演した「闇金ウシジマくんPart2」が公開中。

 (インタビュー・文:りんたいこ、撮影:佐々木龍)

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