売り場を無償提供 イズミヤ、捨て身のサバイバル商い

イズミヤゆいテラスのコワーキングスペース(手前)と多目的スペース(奥)=大阪府河内長野市
イズミヤゆいテラスのコワーキングスペース(手前)と多目的スペース(奥)=大阪府河内長野市

商業施設のワンフロア全体を市が運営する地域交流拠点に無償貸与し、まちの活性化と集客につなげる取り組みが今春、大阪府河内長野市で始まった。舞台はスーパー「イズミヤ河内長野店」4階に開設された「イズミヤゆいテラス」。福祉関連の行政機能を集約したほか、コワーキングスペースなどを設置。世代を超えて人が集うことで、少子高齢化と客層拡大という双方の課題にアプローチする狙いだ。

内装に地元産木材

緑豊かな公園や川に囲まれたイズミヤ河内長野店。エスカレーターで4階に上がると、窓から差し込んだ光がカラフルに彩られた壁面を照らす。市が4月3日に開設した「イズミヤゆいテラス」だ。住生活雑貨売り場だった約2700平方メートルを全面改装。内装は地元産のスギとヒノキの「おおさか河内材」をふんだんに使い、オレンジの明るい基調にした。柱が少ない広大なフロアは、かつてボウリング場だった名残を感じさせる。

ゆいテラスは、市が住民の健康増進や世代を超えた交流などを念頭に設置。市社会福祉協議会の事務所が入居したほか、サークル活動にも使える貸会議室やコワーキングスペースなどを備えている。

イズミヤを傘下に持つエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリンググループが、フロアを無償貸与。市は内装工事など約1億円の整備費を負担した。

イズミヤゆいテラスの貸会議室=大阪府河内長野市
イズミヤゆいテラスの貸会議室=大阪府河内長野市

売り上げ回復の呼び水に

行政機能がスーパーの店舗内に無償で入居した背景には、市とイズミヤの双方が抱える課題がある。イズミヤ河内長野店は昭和47年開業で、建物は老朽化が進む。近くに住む80代の主婦は「河内長野で初めての大型スーパー。昔は幅広い世代の客らでにぎわった」と懐かしむが、近年は周辺に郊外型の家電量販店やホームセンターが進出。競争激化のあおりを受け、売り上げ不振が続いている。

一方で、河内長野市は40年代以降、丘陵地帯にニュータウンが開発され、都心部のベッドタウンとして人口が増加。ただ現在は高齢化が進み、65歳以上の高齢化率は35・2%(令和3年1月末時点)と大阪府内の33市で最も深刻だ。

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