心理学総合案内「こころの散歩道」/ 犯罪心理学 /少年犯罪の心理 /長崎誘拐殺人事件 (HPから本ができました。『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』)新潟青陵大碓井真史

犯罪心理学・心の闇と光
東京小6女児4人監禁事件

の犯罪心理

子どもを犯罪から守るために


2003.7.19

 03.7.13東京渋谷で、遊びに来ていた小学校6年生の女の子4人が、誘拐監禁されました。犯人と見られる男性は、良いアルバイトがあるなどと言って少女たちをだまし、誘拐。手錠をはめ、監禁しました。

 4日後の7.17、少女の一人が自力で逃げだし、4人全員が保護されました。男性は、室内で自殺していました。この男性は、29歳、児童ポルノの作成販売を行い、児童買春で捜査も受けていました。自殺は、当初から計画だったようです。

少女へ性的関心が向かう心理

 普通の成熟した男性は、成熟した女性に性的関心を向けます。しかし、子どもに、関心を向けてしまう人もいます。
 小児性愛(ペドフィリア)と呼ばれる、性倒錯(性的異常)のひとつです。ストレスがたまり、大人の人間関係がうまくいかない人が多いようです。
 ところで、小さな幼児にしか性的関心をもてない人などは、かなり病的な感じがすると思いますが、中学生ぐらいの少女に性的関心をもってしまう成人男性は、残念ながら、現在の日本には大勢います。
 男性としての自信を失い、人間関係に疲れ、同世代の女性とは上手に付き合うことができず、そこで、精神的優位にたてる少女に関心が向いていきます。少女たちを、傷ついた心を癒してくれる天使のように感じる男性もいるようです。
 どこの国にも、性嗜好の異常を持つ人はいて、非合法な児童ポルノもうられているのですが、日本では、援助交際と呼ばれる少女売春が広がってしまったように、少女を性の対象としてしまう男性が特に多いように感じます。そのような社会の中で、今回の事件は起きてしまいました。
 (日本の中年男性が、特に疲れているのかもしれません。今、中年男性の自殺や犯罪が増えています。)

被害者の心 

被害者の女の子達は、どれほど怖い目にあい、傷つたことでしょうか。そして、保護された直後、「自分達も悪かった」などと何回も言っています。
 だまされた自分が悪かった問うことでしょうか。子どもだけで渋谷に遊びに来たことを後悔しているのでしょうか。あるいは、男性に何か吹き込まれたのかもしれません。
 もちろん、被害にあわないために注意しましょうという教育は必要です。しかし、それとこれとは、別の問題です。犯罪において、悪いのは加害者であり、被害者は責められるべきではなく、保護されるべきです。
 多くの犯罪被害者が、不当に自分を責めてしまいます。自分を汚れたもの、無力で無価値なものと見てしまうこともあります。
 今回のような事件だと、周囲から不当に責められることもあるかもしれません。
ある少女の例
 ある少女が、ある学校の帰り道、登校路を少し離れた道で、性被害にあいました。客観的に見れば軽微な事件です。しかし、少女は激しく傷つきます。自宅に戻り、たった一人で、がたがたと震えていました。
 夕方になり、母親が戻ってきました。子どものただならぬ様子に、母親は驚き、娘に問いただします。
 小さな少女は、やっとの思いで、蚊の鳴くような細い声で、何が起こったのかを話しました。
 事情を知り、驚き、慌てた母親は、思わず言いました。
「どうして、そんな道を通ったの」
 決して、娘を責めたり、怒ったりするつもりではありません。娘を心から愛しているのです。娘のことを心配し、何とかして被害を防げなかったのかと感じたのです。そこから出た言葉でした。
 母親は100パーセントの善意で、まったく悪意はないとしても、この言葉はやはり本人を傷つけます。ただでさえ自信の失い自分を責めている本人が、そんな道を通ったことを非難されている、犯罪被害を受けたのは自分自身のせいだと、なおさら感じていますのです。
 少女の話をじっくり聞いた上で、声をかけるなら、こんなふうに声をかけたいと思います。

「辛かったね」「怖かったね」「よく話してくれた、偉かったね」「よくばんばったぞ」「あなたはちっとも悪くない」
(通学路を離れないようにする、人通りの少ないところは一人では歩かないといった指導は、別の機会にすべきです。)

被害を防ぐために

 キャロル・コープは「子どもは35秒でだまされる」と語っています。(『変質者の罠から子どもを守る法 』人間と歴史社)
 大人は子どもに、知らない人について行っちゃいけないよ、怪しい人には気をつけなさい、と教えます。この教えは、正しいことです。しかし、犯罪者達は非常に巧みです。そして、子どもをだますことは、難しいことではありません。「35秒で」というのは、比ゆ的な表現ではなくて、実際の話です。
 道を聞いたり、落し物を探すのを手伝って欲しいと頼んだり、彼らは子どもと仲良くなることがとても得意です(長崎の事件のように)。とても善良そうに見えます。ほんのわずかな時間で、小さな子どもから見れば、もう知らない人ではないし、怪しい人などではなくなってしまいます。
 子どもがもっと大きくなれば、だまし方ももっと手の込んだものになります。幼い子には、「お菓子を上げるからおいで」と誘うでしょうが、大きい子には、もっとその子にとって魅力的なものを使います。
 (今回の事件のように)良いアルバイトがあるよと、誘うこともあれば、子役のオーデションを受けないかと誘うこともあるでしょう。
 様々な危険なワナが待っていることを子ども達に教えなければなりません。

 しかし、子どもを怖がらせ、不安にさせればよいわけではありません。そんなことをしても、子どもの幸せにはつながりません。
 多くの大人は、子どものことを守ろうとする良い人たちだ。しかし、ごく一部に危険人間もいるのだということを理解させねばなりません。人を信じ、人に親切にすることは良いことだ。しかし、自分を守り、より良い社会にしていくために、人間関係にはマナーがあり、ルールがあることを教えていきましょう。
 そして、被害を未然に防ぐためにも、傷ついた心を癒すためにも、子ども達が自分の気持ちを素直に話せるような、雰囲気作りを、親や教師がしていかなければならないと思います。

  


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