小田急、タクシーなど含め経路検索 MaaSアプリ実験
新宿や箱根で 他社利用も見据える
小田急電鉄は7日、次世代交通サービス「MaaS(マース)」のスマートフォンアプリを使った実証実験を東京・新宿駅や神奈川県箱根町などで10月末から始めると発表した。タクシーやシェア自転車を含めた最適経路の検索が可能で、新宿駅ではアプリ上で飲食店の定額サービスも受けられる。遠州鉄道(浜松市)も同じアプリを使う予定。小田急を中心に企業が連携した汎用アプリの全国活用が進みそうだ。
小田急が開発したのはマース用のスマホアプリ「EMot(エモット)」。鉄道やタクシーの経路検索と予約、観光施設のチケット購入などが1つのアプリ上でできる。
たとえば都心から箱根に行く場合、アプリを使えば列車の経路検索から外部サイトに移り、箱根行きの特急ロマンスカーの切符が買える。箱根のバスやロープウエー、観光船が乗り放題になるチケットをアプリ上で買ったり、アプリの地図上で自分が今いる場所から観光施設までの最適経路を調べたりできる。
小田急沿線の新宿駅と新百合ケ丘駅(川崎市)では、飲食店と連携したサービスも始める。駅構内のそばやおにぎりなどの飲食店で、1日1回食事できるサブスクリプション(定額制)サービスを提供。10回分で3500円と、個別に買うよりお得な価格に設定した。
新百合ケ丘では駅前にある小田急の商業施設で一定額を買うと、自宅の最寄りのバス停までの無料乗車チケットを発行。自家用車から公共交通機関へのシフトを促す。
都市部では複数の交通機関の乗り放題といった観光型マースは取り組みにくい。「生活とマースを組み合わせた」(星野晃司社長)ことで、普段使う飲食店や商業施設の利用からマースを実感してもらう狙いがある。
マース普及を目指すための工夫はもう一つある。「あえて小田急色を出さないことで、他社も使いやすくした」(星野社長)ことだ。
小田急はアプリ開発に当たり、経路検索のヴァル研究所(東京・杉並)や日本航空、ジャパンタクシー(東京・千代田)、カーシェアのタイムズ24(東京・品川)などと組んだ。これらの事業者が連携してデータ基盤を作って開発したアプリを、地図検索などの手数料のみでほかの事業者も使えるようにする。これまで日本で汎用型のマースアプリはなかった。
実際、遠州鉄道もこのアプリを使い、経路検索や、沿線の乗り放題の切符販売などに活用する。データ基盤の活用はJR九州も予定している。マースを始めたい地方の鉄道会社にとってはアプリの開発費用などがかからないため、導入のハードルが低くなる。
マースはフィンランドで2016年に始まった。ただ、公営交通事業者が主体のフィンランドと異なり、日本は民間事業者が多く、事業者ごとにマースの取り組みが異なるなど「ガラパゴス化」の傾向にあった。沿線の線路のハード投資が一巡したことで、ソフトのマースアプリ開発にいち早く取り組んだ小田急が主導し、一つのデータ基盤が実用化に向けて動き出し始めた。