■3月2日
幸せな最期と言えるのではないか。ブンさんの愛称で親しまれ、肺胞出血のため先月末、79歳で死去した元TBSアナウンサー、山本文郎(ふみお)さん。生前「生涯現役が目標。周囲に迷惑をかけず、ポコッと死にたい」と話していたとおり、亡くなる1週間前も司会の仕事をこなしていた。
TBSを退社してフリーになった後の1997年、前妻を脳梗塞で失った。その後、約10年間、独り身だったが、2008年、73歳の時に当時30歳年下の由美子さんと再婚した。2人は不思議な縁で結ばれている。知り合ったのは山本さんのTBS時代。子供向け番組の司会をしていたとき、会場に来ていた幼稚園児の1人が由美子さんだった。
再婚する14年前、由美子さんと前夫の結婚式の司会は他ならぬ山本さん。その後も年賀状のやり取りが続き、07年に由美子さんの離婚を知ってから急接近したという。山本さんはかつて1日40本のヘビースモーカー。42歳の時に糖尿病と診断され、医者から「このままでは死ぬ」と宣告された後も好きな酒だけはやめなかった。由美子さんはすべて理解した上での再婚だった。
山本さんは糖尿病から生じた心臓病のほか肺気腫、間質性肺炎も抱えていたが、最近は血糖値を含め正常値に回復していた。マネジャーも務めた由美子さんは1日、小欄の取材に「定期検診を月1回。タマネギとヨーグルトを人一倍、毎日食べさせたのも良かったようです」と振り返った。
昨年の厚労省調べによると、日本人男性の平均寿命も79・59歳(女性は86・35歳)。そこまで生きられたのは、前妻ともども、縁浅からぬ内助の功のおかげ。山本さんも今ごろ、天国で感謝しているに違いない。 (森岡真一郎)