作家の林京子さんが死去「祭りの場」「三界の家」

 少女時代の長崎での被爆体験を基にした「祭りの場」などで知られる作家、林京子(はやし・きょうこ=本名・宮崎京子=みやざき・きょうこ)さんが2月19日に死去していたことが1日、分かった。86歳。葬儀・告別式は近親者で済ませた。

 昭和5年、長崎県生まれ。幼少期を父親の任地である中国・上海で過ごす。長崎高等女学校卒。長崎市内の兵器工場に動員されていた昭和20年8月9日、14歳で被爆した。

 37年に同人誌「文芸首都」に参加。50年に、悲惨な被爆体験を、その後の30年という時の流れに位置づけた「祭りの場」で芥川賞。以降、自らの被爆体験をモチーフにして、自然科学の叡知でもある原爆がもたらす悲惨さ、そして人間の生と死の意味を問い直す作品を抑制された筆致で描き続けた。

 58年には「上海」で女流文学賞、翌59年には「三界(さんがい)の家」で川端康成文学賞。平成2年に「やすらかに今はねむり給え」で谷崎潤一郎賞、12年には「長い時間をかけた人間の経験」で野間文芸賞をそれぞれ受けた。

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