コラム:JTによる海外事業買収、米レイノルズに一服の清涼剤
Kevin Allison
[シカゴ 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本たばこ産業(JT)<2914.T>が米たばこ大手レイノルズ・アメリカンにほっと一息つける機会を与えた。JTはレイノルズのブランド「ナチュラル・アメリカン・スピリット」の米国外事業・商標権を、利益の250倍に上る50億ドルで買収する。
これによりレイノルズは、債務負担を軽減して米国内の販売事業に集中できる。この戦略は、同じような課題に直面している清涼飲料などのセクターにとって役に立つ指針になる。
アメリカン・スピリットは魅力的な資産だ。「100%添加物なし」をうたって30歳以下の若者層に人気があり、全体として縮小が続くたばこ事業にあって異例の成長を見せている。マーケティングに妙味があるため、通常の紙巻きたばこよりも1箱当たりの値段も高く設定されている。
米国内ではアメリカン・スピリットはトップ10ブランドの一角に名を連ねるが、レイノルズはそのブランド力を海外で最大限発揮できるほどの影響力を持っていない。ウェルズ・ファーゴによるとレイノルズの昨年の海外事業の売上高は1億6600万ドル、営業利益は2000万ドルにすぎなかった。しかしJTが巨額で買収するということからすると、より国際志向のある同社なら、アメリカン・スピリットを海外で最も売れている日本以外でも、大規模に販路を広げられる余地があると見込んでいるのだろう。
一方でレイノルズは、6月に完了した米同業ロリラードの250億ドルでの買収で新たに加わった100億ドルの債務の一部を、今回の事業売却資金で返済できる。レイノルズは以前、債務額を2年以内に利払い・税・償却前利益(EBITDA)の3倍、長期的には1.5─2.5倍まで削減するとの見通しを示していた。アメリカン・スピリットの国外事業売却でそうした債務削減が前倒しされる。ロリラード買収後に中止している自社株買いさえ復活できるかもしれない。
そうした道筋を実現できれば、1999年に同じJTに「キャメル」などのブランドの米国外権利を売却して以来、3000%の総リターンを達成してきたレイノルズにとっては、新たな輝かしい実績になる。
また米国内の清涼飲料販売の勢いが衰えているコカ・コーラやペプシコは恐らく、退潮とはいえなお収益が見込める米国事業のかじ取りをうまく進めるために、海外事業の成長をあえて放棄したレイノルズから何かを学ぶことができるだろう。
●背景となるニュース
*JTは29日、米レイノルズ・アメリカンの持つ「ナチュラル・アメリカン・スピリット」の米国外の事業などを約6000億円(50億ドル)の現金で買収することで合意したと発表した。
*レイノルズは3カ月前の同業ロリラード買収完了に続く今回の事業売却で、米国内の事業に経営資源を集中することになる。
*レイノルズの発表は以下のアドレスをクリックしてご覧ください。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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