【報知映画賞】福山雅治、初の主演男優賞 「作品至上主義でありたい」飽くなき探求&妥協なき挑戦続く

報知映画賞主演男優賞を受賞した福山雅治(カメラ・矢口 亨)
報知映画賞主演男優賞を受賞した福山雅治(カメラ・矢口 亨)
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報知映画賞一覧
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 今年の映画賞レースの幕開けとなる「第47回報知映画賞」の各賞が29日、発表された。主演男優賞は「沈黙のパレード」(西谷弘監督)で天才物理学者・湯川学を演じた福山雅治(53)が初受賞した。07年スタートしたフジテレビ系で連続ドラマ「ガリレオ」シリーズの最新作で、劇場版3作目での栄冠。「15年かかったんだなという感慨があります」と喜んだ。表彰式は12月下旬に都内で行われる。

 福山は静かに目を閉じ、丁寧に言葉を紡いだ。

 「大変うれしく光栄に思います。僕ひとりではなく、西谷監督、(鈴木吉弘)プロデューサー、そして、生みの親である東野圭吾さんの受賞でもあると思っています」とチーム・ガリレオでの受賞を強調。「間隔は空いてますが、15年やってきましたから。この主演男優賞をいただくのに15年かかったんだなという感慨があります。『ガリレオ』という作品に関わってくださった皆さんと喜びを分かちあいたいです」とかみ締めた。

 科学的な検証と推理で難事件を解決する湯川学は、天才的な頭脳を持つ物理学者。「真夏の方程式」(13年)以来9年ぶりのシリーズ最新作は興収29・6億円(28日現在)のヒットとなった。「再結成のバンドや、人気のドラマ、映画が復活した際、やっぱり面白いと思うものもあれば、以前の方が…と寂しくなる作品も正直あります。『最新のガリレオこそ、最良のガリレオ』と感じていただくために、“最初の観客”にあたるスタッフさんの気持ちをつかむと決めていました」。撮影の数か月前から1ミリ単位でスーツを調整した。何度も髪形のテストを行い、重要アイテムの眼鏡も改良。スタッフ全員がそろう衣装合わせの場で“一発回答”を出した。

 1988年、19歳の時に映画「ほんの5g」で俳優デビューした。90年代から3、4年に1度のペースで連続ドラマに主演してきたが、初めて長期的に向き合ったのが「ガリレオ」だった。

 「テレビドラマに出演する機会をいただきましたが、すごく本数をやったわけではない。映像作品を年間のスケジュール、2、3年先のスケジュールに組み込むようになったのは『ガリレオ』から。初めての主演映画は(2008年の)『容疑者xの献身』。その時は38歳です。昔の作品をキャリアにカウントしていない訳ではなくて、『しっかりと取り組んでいこう』とやり始めてから15年ほどしか経っていない。おかげで、53歳の現在もフレッシュな新人的な気持ちで現場にいることができています」

 ドラマ1作目のリハーサル室からスタッフと二人三脚で“湯川的”な所作、体の動きを模索。「実に面白い」の名フレーズも浸透した。「役を演じながら楽しめることはなかなか少ないです。『正解かな? 合っているかな?』という不安が常に付きまといますから。湯川に関して言えば、楽しく演じられています。例えて言うならば『湯川学』というスポーツカーに乗り込み、ハンドルを握るのが僕。高性能のスポーツカーでドライブを楽しんでいるイメージです」。15年の月日を経て到達した境地。追い求めてきたキャラクター像を手中に収めた。

 俳優業だけでなく、音楽活動でも第一線を走り続けるが、いずれも年齢を重ねるごとに責任感は増している。「30数年間、この仕事をやらせてもらう中で、ファンの皆さまの応援をいただき、僕に興味を持って『一緒に仕事をしたい』と思ってくれるスタッフさんがいないとキャリアは続かない。一人ひとりと向き合うことで生まれる責任は、若い時より感じています。その責任が何かと言えば、納得できる作品にするための努力、結果を残すという部分ですね」

 福山は「一表現者として作品至上主義でありたい」と言い切る。「俳優は作品を作り上げるための一部。僕自身、いつ何時、どの現場でも瞬時に役を作り上げるタイプではない。成り立ちを含め、打ち合わせから参加させてもらっています。故に作品の間隔も空いてしまう…(笑い)。でも、そのスタンスは変わらないと思います」。飽くなき探求と妥協なき挑戦は続く。(加茂 伸太郎)

 〇…「ガリレオ」全体における湯川学の魅力、作品自体の魅力について「小説も映像も、作品そのものが発明」と語った。「湯川は事件に絡む人の動機、経緯には全く興味がない。しかし、自分が興味を持った謎やトリックに対して真っすぐに突き進んでいく。とは言え、付き合いやすい人間ではない。そんな天才物理学者に内海薫が毎回捜査協力を依頼しに来る。そうなる(=事件が解決する)ことは分かっているのに、そこに至るまでの湯川と薫の会話のラリー、思考の螺旋(らせん)が楽しいんだと思います」と分析。「読者や視聴者の方々が解決する過程を楽しむ参加型ミステリー。一人ひとりのキャラクター、謎解きの奥行き、人間ドラマの重厚さを練り込んだ東野圭吾先生の発明。映像化においては監督、スタッフの発明だと思っています」と感謝した。

 〇…福山は柴咲コウ(41)とのユニット「KOH+」として主題歌「ヒトツボシ」も担当した。「映画はいい出来だけど、後ろの音楽は映画に出ているからやっている―というような届き方ではなく、『KOH+』の柴咲さんの歌いいよねと言ってもらうことを目標に作っています」と力説。「『KOH+』の音楽がないと『ガリレオ』の映画版は締まらない、物足りない、と言われるような存在でありたい。ハイプレッシャーですけど、だからこそ挑みがいのあるプロジェクトになっています」と明かした。

 ◇沈黙のパレード 草薙(北村一輝)が担当した少女殺害事件で無罪になった男(村上淳)に、少女殺害の容疑がかかる。今回も証拠不十分で釈放されるが、あろう事か遺族を挑発。憎悪の空気が覆う中、秋祭りのパレード当日、男は死因不明の遺体で発見される。

 ◆福山 雅治(ふくやま・まさはる)1969年2月6日、長崎県生まれ。53歳。88年「アミューズ・10ムービーズオーディション」に合格し俳優デビュー。90年「追憶の雨の中」で歌手デビュー。94年「IT’S ONLY LOVE」で初ミリオン。2000年「桜坂」が200万枚超ヒット。10年NHK大河「龍馬伝」主演。出演作に映画「そして父になる」「三度目の殺人」。12月24日から恒例ライブ「福山☆冬の大感謝祭」を行う。

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