中韓、関係改善で合意 THAAD問題は対話継続
【ソウル=鈴木壮太郎】中韓両政府は31日、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備を巡って悪化した両国関係を改善することで合意した。これを受け、習近平国家主席と文在寅(ムン・ジェイン)大統領は11月10、11日にベトナムで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、会談する。THAAD問題でこじれた両国関係がひとまず正常化に向かう見通しとなった。
韓国政府によると、両国は交流拡大が互いの利益にかなうとの認識で一致、すべての分野の交流・協力を正常な発展軌道に早急に回復させていくことで合意した。
THAAD問題を巡っては、韓国は配備に反対する中国の立場を留意。THAADが北朝鮮の弾道ミサイル迎撃が目的で第三国を狙ったものではなく、中国の安保を脅かすものではないとの立場を示した。両国は軍事当局者のチャネルを通じ、THAAD問題について意思疎通することで合意した。
中国外務省も31日、韓国との協議結果を発表した。THAAD配備は中国の安全保障を損ねることはないとの韓国の方針について「留意する。韓国が問題を適切に処理するよう望む」と表明。「各分野での協力を早期に正常な軌道に戻すよう促進することで合意した」としている。
両国は北朝鮮の核問題の平和的解決の原則を改めて確認。あらゆる外交的手段を通じ解決をめざすことにした。解決に向け戦略的な協力関係を強化していくことにした。
THAADは北朝鮮から弾道ミサイルが飛来した際に、高高度で迎撃するミサイル防衛システム。2014年に駐韓米軍司令官が配備の必要性を提起。朴槿恵(パク・クネ)前政権が昨年に配備を決定。今年4月に中部の星州に搬入が始まった。5月に発足した文政権は当初、配備に慎重だった。ただ、北朝鮮の相次ぐ核・ミサイル挑発を受けて方針を転換。9月に発射台4基が追加配備された。
中国はTHAADのレーダーが北朝鮮だけでなく、自国にも向けられていると強く警戒。THAAD配備を容認した韓国に厳重抗議してきた。公式には認めていないものの、中国人の韓国への団体旅行を制限したり、消防法を理由に、韓国ロッテグループのスーパー「ロッテマート」を営業停止にするなど、韓国への「経済報復」を続けてきた。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記のもと、ミサイル発射や核開発などをすすめる北朝鮮。日本・アメリカ・韓国との対立など北朝鮮問題に関する最新のニュースをお届けします。